【ガンダム誕生の背景に迫る展覧会が開催】全国6会場を巡回!「富野由悠季の世界」展

 日本人にとっての富野由悠季とは

富野由悠季といえば、我が国が誇るアニメコンテンツの王者、「機動戦士ガンダム」シリーズの生みの親であり、総監督、原作者である。

筆者の世代(1970年代生まれ)にとって、ガンダムはもちろん、「勇者ライディーン」に始まり、「無敵超人ザンボット3」、「伝説巨人イデオン」、「戦闘メカ ザブングル」などなど少年期に夢中になったロボットアニメのほとんどを演出された富野氏は、文字どおり「伝説の巨人」である。

 

富野氏の作品の特徴をあえてあげるなら、(当時としては)一風変わったロボットデザインを採用したり、ディストピア的な平行未来の世界観、そこで懸命に生きる「リアルな」若者たちが繰り広げるドラマなどが印象的だ。

 

「鉄腕アトム」の演出に始まり、約半世紀にわたる演出家としてのキャリアを通して「アニメとは映画である」を貫いてきた富野氏。そのポリシーはアニメという独特なメディアへの「愛」に欠ける発言とも取れる。これについては監督は映画的なものを意識し、自身の作品に利用するようになった理由について記述がある。その著書から引用すると、

 

”子供にとって難しいテーマでも、映画はともかく目先の画像がかわることで、見せることができる性能があるために、’子供にもなんとか見切ることができる’というものです。その内容については成長してから理解できるようになったりするので、映画というものは素敵なものなのです”  ー富野由悠季 著「映像の原則」(キネマ旬報社)より

とある。

ところで上記の著作「映像の原則」は映像演出関係以外にも、広く世の中へ自分の考えをプレゼンテーションする必要がある人たちにとってはヒントの宝庫なので、ぜひ手にとって一読されることをおすすめする。

初の「富野由悠季の世界」展が開催! 

そんな富野氏が生み出してきた世界観とメッセージを、点と点をつなぎ合わせてロードマップ的に検証し、より理解を深めようという、非常に興味深い企画展が、6/22より開催される。

 

会場は福岡市美術館(〜9/1)を皮切りに兵庫、島根、青森、富山、静岡と全国6つの美術館を巡回。「機動戦士ガンダム」放映40周年にあたる年に、富野監督自身の半生を振り返る初の大回顧展となる。

 

ちなみに、青森、島根、静岡の会場は、JAMイチ押しの映像作家、塚原重義監督作品「押絵ト旅スル男」が期間上映された「めがねと旅する美術展」も開催された県立美術館だ。今年開催された、大英博物館でのマンガ展、さらには東京国立近代美術館での「高畑勲展」も発表され、各国の美術館ではマンガ・アニメ企画が目立ってきている。日本のマンガ・アニメは着実に世界の芸術史の新たな1ページを刻む存在となったと言って良いだろう。

 

少し前になるが4/23に「富野由悠季の世界展」の記者発表会が行われたのでJAMも参加してきた。富野氏も参加した会場では、展覧会に向けた各美術館の学芸員たちの熱い想いを聞くことができた。

 膨大な資料とその先にあるテーマ 

富野氏は企画当初、「演出の展示は無理」、「馬鹿な企画はやめろ」とバッサリダメ出しをしたそうだ。にもかかわらず、企画にあたった学芸員たちの1年以上にもおよぶ、熱意あるアプローチに触れるうちに自身への「死に土産」(記者発表コメントより)として世界展に賛同するに至ったとのこと。

 

巡回展覧会のスタートを切る福岡市美術館の学芸員である、山口洋三氏によると

「1年半という時間をかけて準備を進めている。我々の熱意で監督を説得し、一人一人の学芸員が各作品を担当分けして準備している。膨大な資料から今も作品の選定を続けている。」

「通常アニメーション作品の展示で見るビジュアルは他の著名デザイナーやアニメーターの作品であったりするので、監督自身が描いたデザインや作画の展示は実は少ない。」

が、しかし、「監督のシゴト」とはどういったものなのか。富野氏の映画にかける情熱と足跡を振り返るという趣旨の展示になるそうだ。それは「演出の展示は無理」と否定されたスタート地点から、まさに多面体のような富野作品に対する、企画者、学芸員たちからのひとつの答えの提示だという。

(気になる展示テーマおよび構成は下記を参照)

大テーマは「旅立ちと帰還、対立と和解、生と死、破滅と再生」

本展覧会のテーマは富野作品に多くとりあげられるテーマを中心に、発案された。

初監督作「海のトリトン」(1972年)から、最新作「ガンダムGのレコンギスタ」まで、監督のキャリアのおおまかなタイムラインに沿って、作品ごとに6部に分け、それぞれにサブテーマを掲げる作りとなっている。さらに少年時代の富野氏の貴重なスケッチなども蔵出し展示される。

内容は以下より。

 

◆サブテーマ

 

第1部 宇宙(そら)へあこがれて

(幼少期/海のトリトン/勇者ライディーン/無敵超人ザンボット3)

 

第2部 人は変わってゆくのか?

(機動戦士ガンダム/伝説巨神イデオン)

 

第3部 空と大地の間で逞しく

(無敵鋼人ダイターン3/戦闘メカ ザブングル/OVERMAN キングゲイナー/ラ・セーヌの星/しあわせの王子/闇夜の時代劇・正体を見る)

 

第4部 魂の安息の地は何処に?

(聖戦士ダンバイン/ガーゼィの翼/リーンの翼/重戦機エルガイム)

 

第5部 刻の涙、流れゆくその先へ

(機動戦士Zガンダム/ガンダムZZ/逆襲のシャア/F91/Vガンダム/ブレンパワード)

 

第6部 大地への帰還

(∀ガンダム/リング・オブ・ガンダム/ガンダムGのレコンギスタ)

 

以上

思わずテーマの発案者に拍手を贈りたくなる。ファンにとっては背中をくすぐられるような、なんともゾワっとするテーマ群ではないか。ついガンダムのタイトルコール風に復唱したくなるのだから、筆者もたいがいだ。

 

また記者たちからの質疑応答では、「作品に登場する個性的な女性キャラにも焦点をあて、”監督の女性感”なども鑑みれる予定」、「英語対応にもできる限り気をくばり、海外からの来客者には富野監督作品に詳しいバイリンガルスタッフが常駐する予定なので、気軽に聞いてほしい」その他、著書、関連書籍を紹介するコーナーも予定している。

 

◆展覧会スケジュールは以下の通り。

 

・福岡市美術館 2019年6月22日~9月1日

・兵庫県立美術館 2019年10月12日~12月22日

・島根県立石見美術館 2020年1月11日~3月23日

・青森県立美術館 2020年4月~6月予定

・富山会場 2020年7月~9月予定

・静岡県立美術館 2020年9月~11月予定

 

お問い合わせ:「富野由悠季の世界」展事務局 info@tomino-exhibition.com

展覧会に込められたメッセージとは。

 

富野氏は記者発表会にて、

「この歳まで、大きな病気もしないで来れたので、現在こういう立場で、こういう場所にいさせてもらっている。両親にありがたいと思っている。また、こういう形でご支援いただき、催し物をさせてもらえる事も、ありがたいと思っている」と謝辞を述べた。

 

さらに「“こういう馬鹿な企画はやめろ”とハナから言っていた当事者としては、ありがたいと思いながら、やはり“概念を展示するなんて事は到底できない”という意見を変えるつもりはありません。」としつつ、自身よりも2回りも若い企画者や世間の注目に「時代が変わったと感じる。」と語った。

 

展覧会について、「メディアが果たすべき役割として、コンセプトやメッセージをどのように伝えるのか。その課題みたいなものを、この世界展が含んでいるのではないかと、驕り昂ぶって語ることができる。巨大ロボットアニメであってもそこに本来のメッセージ性やドラマ性を含むことができるのだ、ということを実験的かもしれないが、自分なりにやってきたつもり。来てくださる方がそれを読み取って”新しい生き方の方向性”といったものを発見してほしい。」と締めくくった。

会場では、富野監督に会える?

 

また期間や会場も多岐に渡り、富野氏がフラッと来館するタイミングに出会う可能性は限りなく低いだが、各地イベントにてご本人の登壇を予定しているそうだ。

今後のスケジュールは公式サイトをチェックしてほしい。

 

(取材・文 橘 茂生)

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