【取材】デジタルだけでここまで出来る!? K×Drop!!監督の水谷汐里さんに話を聞きました

デジタル環境でアニメを制作する、次世代のクリエイターに話を聞けました!

現在、プロの制作現場でも着々とデジタル制作環境にシフトする会社も増えつつあるアニメ制作業界。新しいツールを導入して新しい表現や手法にチャレンジされている会社も多い中、今回話を聞かせていただいたのは学生のうちから積極的にデジタルツールを取り入れて、少人数でクオリティの高い作品を作り続けられている水谷汐里さん。

5月のコミティアにてK×drop!!で出展された時にお会いして取材をする機会を頂けました。これからアニメ制作業界を目指す方や、自身でアニメを作ってみたいと思われている方にはとても参考になる話をお聞き出来ましたよ。

水谷汐里さんの使用されているデジタルツール

PC:MacBook Pro (Retina, 15-inch, Late 2013)

液晶タブレット:Cintiq 13HD

ソフトウェア:CLIP STUDIO PAINT, PaintMan, Photoshop, After Effects

K×Drop!!

制作期間について

ー制作期間はどれくらいだったんですか?
企画を入れると1年8ヶ月です。企画は2015年10月に1ヶ月ほど殆ど一人で考え、その後に絵コンテを制作しました。大学3年生になる前の春休みに有志で出す展覧会があり、当初はそれに出す予定だったんですが全然間に合わなくて。展覧会では予告編だけだしました。完成版は今年の3月末にyoutubeで公開して5月のコミティアでBlu-rayを出しました。

ーBlu-rayにもメイキングが入ってましたし、コミティアでもメイキングブックを出されてましたが、メイキングも見て欲しいという事だったんですか?
映像だけだとデータだけで済んでしまうので形に残るものがほしいなと思って。あと「フミコの告白」のメイキングブックを読んで1作目の「愛をこめて」を作ったので自主制作のメイキングブック作るのいいなぁと思って作りました。

ー「フミコの告白」の石田祐康さんの影響はあったりしますか?
あのようなスピード感は自分では作れないなと思っているので真似ようとはしてないですが、メイキングブックを見て出てきたソフト(StylosやAfter Effectsなど)を真似してやっているのでそういう意味では影響受けてますね。

ー石田さんだと疾走感や画面の展開力といった作家性があるように思うのですが、水谷さんは自身でこだわられている表現はあるんですか?
作家性みたいなものは自分にはないなと思っています。どの作品にも共通するものがあるというのはなくて、いろんな物をまんべんなくやりたいなと思ってます。K×drop!!に関して言うと、過去作品がゆったりふんわりしている作品だったので反対の薄暗くて不気味な雰囲気を作りたい、キャラクターを生き生き動かしたい、という想いで作っています。アニメーターに憧れて自主制作を始めたので、アニメーターの方のように動かしたい、演出したいという気持ちです。

StylosとCLIP STUDIO PAINTについて

ーデジタルで動きを作るという点で、Stylosというソフトの使い心地はいかがですか?
Stylosを使っていたのは「キキョウ」までで、それ以降はCLIP STUDIO PAINTです。今回のK×drop!!もCLIP STUDIO PAINTですね。

Stylosの方が素材管理がし易いんですが、プレビューするには数字を打ち込む必要があってちょっと面倒だなと思っていました。CLIP STUDIO PAINTは描きながらすぐにプレビューができるので、私はCLIP STUDIO PAINTの方が原画を描くにはいいなと感じています。

CLIP STUDIO PAINTで描かれた原画 ©2016 Mizutani Shiori

ーCLIP STUDIO PAINTでアニメーション作品を作るメリットはなんなのでしょうか?
一番は描き味です。Stylosでは拡大すると線がギザギザしてしまい、それが嫌でCLIP STUDIO PAINTにしたという事もあります。StylosはすぐにPaintMan(色指定、彩色ソフト)に作業を引き継げるので楽なのですが、CLIP STUDIO PAINTでもPaintMan用にアニメーションセルの書き出しができるんです。ちなみに今回手伝ってくれた動画スタッフの方々はアニメ私塾で自主的に勉強をされていたり、学校でアニメを学んでいる方ばかりだったので、CLIP STUDIO PAINTやStylosなどのアニメーションに対応したソフトを所持している方が多い環境でした。

CLIP STUDIO PAINTで描かれた動画 ©2016 Mizutani Shiori

ーカット単位での管理がし易いというところがStylosのメリットの1つだと思っているんですが、CLIP STUDIO PAINTでのデータ管理はいかがですか?
CLIP STUDIO PAINTだとPCのファイル管理システムで行います。Macを使っているのでFinderですね。商業アニメだと作画に修正などを入れる際にStylosの方が良いのかなとも思いますが、今は自身で全ての原画作業をしているのであまり管理に関して問題はありませんでした。他のスタッフとのデータのやり取りはGoogle Driveを使ってました。

K×drop!!で大変だったこと、成功したこと

PaintManによる仕上げ ©2016 Mizutani Shiori

ー制作で大変だったことはありますか?
スケジュール管理が毎回上手くいかないんですね。今までは映像に関してはほぼ一人だったのですが、K×drop!!では動画と仕上げと背景を手伝って貰ったのでこれも初めての経験で難しかったです。原画をやりながら動画を出していたので、自分の原画が追いつかなかったりとか…。逆に良かったことは仕上げ工程未経験の方もいた中で、色彩設計やソフトの使い方講座をしっかり作って事前に共有できたことですね。

色彩設計 ©2016 Mizutani Shiori

ーK×Drop!!において表現やプロジェクトとして成功した部分はどこでしょうか?
色が成功したかなと思います。今までの作品は動画が終わってから色を決めてたんですけど、今回は最初から3パターンの色を決めてから作りました。予告編制作時に撮影のテストも兼ねて色彩設計の調整も出来ました。ちなみに最初決めた3パターンというのは「デパート内の電気がついている所」「月明かりが出ている所」「廊下の薄暗い緑色っぽい所」でした。あと撮影も頑張りました。

アニメ制作を始めたキッカケは?

After Effectsによる撮影 ©2016 Mizutani Shiori

ーアニメを初めたきっかけはあるのでしょうか?
最初は手描きアニメを作ろうと思って大学に入ったわけではなかったんですが、アニメーションブートキャンプというアニメーターの方が講師で来てくれて三泊四日で手描きアニメの作品を作る、という合宿がありまして、それに行って初めてアニメーターの技術を見て憧れてしまい手描きアニメを作ろうと思いました。この合宿は好きだったアニメのメインアニメーターの方が来るという事を聞き、会いたいなという動機で参加したのですがその合宿が大きなきっかけになりました。この合宿に参加してなかったら3Dのゼミに入っていたかもしれないですね。

今後の制作について。そして卒業制作「エメラルドの輪」

ー今後、チャレンジされたい表現や作風はあるんですか?
卒業したらミュージックビデオを趣味で作ってみたいですね。在学中に依頼がくることもあったのですが、自主制作が忙しくてなかなか受ける事ができませんでした。卒業したらもっと忙しくなるかもしれませんが…。

ToonBoom Storyboard Proを使って制作された絵コンテ ©2016 Mizutani Shiori

ー現在は卒業制作を作られているのでしょうか?

そうですね、いま絵コンテのラフが終わった段階です。ToonBoom Storyboard Proを使いたくて卒制から使っています。理由は、いままで絵コンテはCLIP STUDIO PAINTで描いていたのですが、絵コンテを描いた後にビデオコンテにする際にAfter Effectsといったりきたりするのが地味に大変だったんです。同時に出来るソフトがないかなと思った時にToonBoom Storyboard Proを見つけて使い始めました。現在使ってますがめちゃくちゃ良いですよ!

ToonBoom Storyboard Proを使って制作された絵コンテ ©2016 Mizutani Shiori

卒業制作は「エメラルドの輪」というタイトルです。私が昔バドミントンをしていたということもありバドミントンのアニメを作りたいなと思って作っています。前回は男子2人しか出ていない作品だったので今回は女の子が描きたくて。女の子2人のふんわりとした、5分くらいの爽やかな作品になる予定です。(取材終わり)


様々なソフトを使いこなし、スモールチームでアニメ制作を続けている水谷さん、卒業後の活躍は本当に楽しみです。卒業制作「エメラルドの輪」については自身のHPで随時情報を更新されていくそうですよ。
(取材、文章:迫田祐樹)

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