【イベント潜入】東京初上陸!「押絵ト旅スル男」の浅草花やしき上映会を潜入レポート

本日のJAMは、先日浅草花やしきに行われた塚原重義監督「押絵ト旅スル男」の東京上映会のレポートをお届けします。

夜の花やしきに来たのはもしかしたら初めてかもしれない。会場入口付近に到着すると、すでに入場を待つお客さんが列を作っていた。

浅草花やしき入り口付近

園内は、夜になるとイルミネーションが点灯され、とても明るくきらびやかな雰囲気。子どもだけでなく、大人やカップルも楽しめる空間となっている。

夜の浅草花やしき、花やしき座での映画上映!

花やしき座開場!

上映会場である花やしき座の入口ドア付近に着くと、きらびやかな花やしきの雰囲気とはうって変わって、軍服に身を包んだ屈強の男たちが立っていて、ものものしい雰囲気を醸し出していた。後から聞くと彼らはこの上映会の開催を聞きつけて、自前の軍装をまとい会場整理の応援にかけつけた塚原監督の友人たちなのだそうだ。(その後、筆者も一緒に記念写真を撮っていただいた。)

満員の場内

花やしき座の中に入るとすでにお客さんで満席状態であった。今回メインで上映される「押絵ト旅スル男」は、2018年7月20日から開催されている「めがねと旅する美術展内で限定上映されているアニメ映画で、青森県立美術館、島根県立石見美術館、そして現在(2019年1月初め)では静岡県立美術館で上映されている。こういった事情もあり東京在住のファンから見たいけどなかなか行く機会を作れない、という要望の高まりもあり今回、一夜限りの上映会の開催に至った。ということで上映会場には首都圏の塚原作品ファンやキャスト陣のファンが詰めかけていた。

「押絵ト旅スル男」からくり屋役の黒瀬涼花さん

本日司会を務めるのは、大正女学生風の袴姿がよく似合う凛としたイメージの女性。「押絵ト旅スル男」の中に出てくる「からくり屋」の声優でもある黒瀬涼花さんだ。

「端ノ向フ」上映

塚原重義監督

オープニングから塚原ワールドが繰り広げられる。作品全体から昭和初期風のミステリアスかつレトロな空気感が堪能できる作品だ。見せ物小屋風の短いカット描写やアコーディオンらしきBGMなど、なんともいえない郷愁を感じる。

作品に登場する陸軍の小隊の衣装がそのまま、今日の応援部隊が着用している衣装と同じである。これも塚原ワールドに浸った者だけが味わうことができる独特のデジャブ感だ。

「押絵ト旅スル男」上映

会場は塚原幻術に酔わされる

(YouTubeにて公開中の冒頭の2分20秒の映像。)

続いて、本日のメインイベントである、「押絵ト旅スル男」の上映が始まった。

今作品は2018年完成の塚原監督最新作で、前述した青森県立美術館、島根県立石見美術館、静岡県立美術館の3つの美術館で順次開催している企画展『めがねと旅する美術展』にて限定上映されており、また現在も静岡にて限定上映されているため詳しい内容については触れないでおくが今回は特別にここ浅草花やしき座で上映会を開催されることになった。声優陣に梶裕貴さん、細谷佳正さん、坂本頼光さんが出演。キャラクターデザインはやぼみさんが務める。

塚原監督作品は、文字通り夢を見ているようなビジュアルが特徴で、見るものたちを作品世界へ没頭させていく、監督の演出法を筆者は勝手に「塚原幻術(マジック)」と呼ぶ事にした。その独特の世界観は近年、アーティストSEKAI NO OWARIのステージデザインなどにも採用されるほどである。

そして、今回江戸川乱歩の作品と塚原アニメの作風は非常に相性が良いと感じた。ついでにいうと、永井荷風や坂口安吾といった昭和初期の文豪の作品なども、ぜひ監督に映像化してほしいものだ。

トークショーがスタート

トークショーが始まった

上映が終了し拍手が鳴り止まない中、塚原監督とキャラクターデザイナーのやぼみさん、プロデューサーの迫田さんがステージへ登場。ここからは司会の黒瀬さんを交え、「押絵ト旅スル男」についての制作秘話などについてのトークがスタート。

キャラクターデザイン、作画監督のやぼみさん

諸事情によりマスクを被ったキャラクターデザイナーのやぼみさん

やぼみさんは、アニメーターとしての顔のほかにもLINEマンガに連載を持つ漫画家の顔を持つ。(「めぐるめく季節の中で」LINEマンガにて毎週日曜更新中!)また、今年夏に公開された劇場映画「ペンギンハイウェイ」では衣装設定で参加している。今回「押絵ト旅スル男」の制作現場ではキャラクターデザイナー、作画監督、原画の三刀流で、迫田さん曰く「キャラデザ、作監、原画が同一人物なので、キャラのくずれがない、とてもリッチな映像」と言っているとおり、本作品のクオリティを高める重要な役割を担っている(アニメ制作のフローでキャラクターデザインと作画監督は別の方が担うのが通例だ)。

そのやぼみさんだが、今回は「自分の描いたキャラに一流声優さんの演技がはまっていて、とてもおいしいと感じた」と語った。

キャスト陣とのコミュニケーションを大切にしたアフレコ

「押絵ト旅スル男」のプロデューサー迫田氏

本作のキャストは、兄役に細谷佳正さん、弟役には梶裕貴さんと、どちらも演技派で知られる人気声優さんだ。

梶さんは塚原監督の中での弟像にぴったりで本番前の打ち合わせを経てほぼイメージ通りに演じていただけたという。対照的に、細谷さん演じる兄の狂った演技をどう表現するかは細谷さん、塚原監督、そして梶さんも含めて現場で試行錯誤して見つけていったそうだ。

「珍しいと思うんですが…」と前置きして迫田プロデューサーが語ったアフレコ裏話では、実はアフレコ収録前にたっぷり時間を1時間程とって塚原監督過去作品をみんなで一緒に見たのだそうだ。世界観が重要な作品なだけに過去の作品を見ることで掴める事があるだろうという音響監督の山田陽さんのアイデアであったという。ちなみにそのタイミングで現在制作中&クラウドファンディング中の最新作「クラユカバ」の映像を声優陣に見てもらい評価を聞いたりしたそうだ。ちなみに二人ともに、とても気に入った様子だったとのこと!これはもしかして新作で再び梶さん細谷さんのコンビがキャスティングか?と場内は期待したが、迫田さんはすかさず、「お二人にはまだオファーしてません」と答えると笑いがおこる場面も。

上映会の会場は映画の舞台と同じ場所?

続いて劇中に出てくる印象的な背景美術である「凌雲閣」は、この会場「花やしき座」の近くにあったらしい! という話が飛び出し、筆者は驚いた。浅草にそのようなタワーがかつてあったことはなんとなく知っていたが、まさかこの会場のあたりだったとは。(正確には、花やしきからは少し離れた場所らしい ) また監督からは続いてこんなエピソードが披露された。

2018年初頭、凌雲閣の基礎部分が工事中の現場で発掘され話題になった。まさに本作品の制作中の出来事である。さらにそこで発掘された当時のレンガをわけてもらえるというニュースを聞きつけ、監督は急いで駆けつけたそうだが、レンガの配布はすでに終わっていて片付けられていたそうだ。仕方なく、その辺に落ちていたレンガらしき欠片を大切に持ち帰ってきた。それはきっと凌雲閣に使われたレンガに違いないと筆者も信じる。

続いて黒瀬さんより「作品作りで常に大切にされていることは何ですか?」との塚原監督への質問に対し、 監督は「空気感、特に湿度」「登場人物の目線で世界を”覗いている”感覚」を大切にしていると答えた。

確かに。古い和紙を透かして向こうを見ているような、障子の穴を覗き込んでいるような、良い意味で「妙」な空気感は独特だ。そして今回の上映された2作品はどちらも「近代日本」という枠の中での似たような時代背景作品だが、一方は日の差さない路地裏の冷たい黴臭さ、もう一方は屋台の並ぶ盛り場の混沌とした生臭さと、微妙な空気感の違いを生み出している。そして、登場人物たちはそれぞれ”事件”を体験するものの、その主観の外側は判然としない(しかし確かに世界は広がっている)ような”目線”の感覚。 なるほど。数ある塚原幻術が生まれる背景にはこうした独特の「空気感」も一役買っていたわけだ。

旅をする映画

「押絵ト旅スル男」は今まで青森、島根と限定公開され、現在は静岡県立美術館にて公開されている。

国内のあちこちを旅しながら、限定上映されるスタイルも、とてもユニークな取り組みだ。お近くの方は是非、一度観に行ってみてはどうか。現地のみでしか買えないDVDやグッズなどもあるということだ。(今回の浅草花やしき上映会会場では一夜限り特別に販売された)

アヌシー映画祭出展の新作情報も

ここで先ほど、声優さんとのエピソードにもちらっと出ていた、塚原監督の新作「クラユカバ」のトレーラーの上映があり、それに続いて、塚原監督自ら描いたコンセプトアートやプロップ、設定資料なども紹介されると会場からは「おおーーっ」という感嘆の声が聞かれた。

最新作「クラユカバ」だが、2018年のアヌシー国際アニメーション映画祭の見本市(MIFA)にも出展している。現地に設置されたセールスブースには世界中からバイヤーや共同制作先を探すプロデューサー、クリエイター志望の学生などが訪れた。独特のアートやスチームパンクな美術設定は現地でも好評を得た。

アニメ制作の副産物を未来型エンターテインメントへ転化する

さらに会場では「押絵ト旅スル男」そして最新作「クラユカバ」の未来型エンターテインメントの形の一端が披露された。

アニメ制作時に使用された3Dモデルや風景を描いた背景美術を利用してVRコンテンツとして二次展開するというのだ。クラユカバの映像だが現在クラウドファンディング中のサイトでも公開されているものがあるのでここで紹介したい

会場ではこの他にクラユカバ作中で主役の大辻荘太郎が住む扇町という街にユーザーが実際に入って移動をしながらコンテンツを楽しんでいる様子や、「押絵ト旅スル男」の劇中に登場する凌雲閣の展望台から当時の浅草の風景を眺めることができるコンテンツも流された。

このVRコンテンツではセットの中に入ってそのアニメの世界のキャラと遭遇したり、その世界を探検するだけでなく実際にアニメ制作をしている現場(ロケハンやカメラテスト)に出くわす可能性もあるという驚きの新感覚コンテンツだ。現在開発中ということで、次回の進捗報告が待たれる、とても興味深いコンテンツだ。公開されたら、筆者も浅草十二階に上って兄さんの後ろから昔の浅草の展望を眺めてみたいものだ。

そして、最後に「クラユカバ」についての最新のニュースがアナウンスされた。 パイロットムービーの制作費を集めるためのクラウドファンディングがスタートするという(現在、絶賛クラウドファンディング実施中)

Makuakeの公式ページはこちら

りょーちも氏や皆川一徳氏など豪華クリエイター陣が参加する本作のファンディング。一体どんなリターンが飛び出すか?こちらも期待大だ。

今回の会場である花やしき座の空間作りや衣装に身を包んだサポートスタッフの演出など、塚原作品に流れる独特の空気感や世界観とマッチしていて、さらに実際に映像に登場するロケーションと、会場の立地がほぼ一致することで、巧みなデジャブ感を何度も味わうという稀有な経験ができた、実にトリッキーなイベントであった。

今回はここまで。アスタルエーゴ!!

(取材、写真、文:橘 茂生)

(編集:JapanAnimeMedia編集部)

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