塚原重義最新作!「押絵ト旅スル男」制作秘話をお聞きしました。前編

こんにちは、ライターのMoAです。

私は今回、自主制作アニメーション「端ノ向フ」や「SEKAI NO OWARI」のライブ演出アニメやステージデザイン協力を行っているアニメ監督の塚原重義さんの新作アニメーション「押絵ト旅スル男」の制作が行われているという情報をキャッチし、塚原重義監督、そしてプロデューサーの迫田祐樹さんに取材をさせて頂きました。

新作「押絵ト旅スル男」はどのように制作されているのか、塚原監督独自のディープな世界観の制作手法からアニメ制作業務における基本的な話まで幅広く話して頂けました。あの独特の世界観制作の裏側を垣間見ることが出来ましたよ。

「押絵ト旅スル男」はどんな作品?

塚原重義 + やぼみ アニメ《押絵ト旅スル男》イメージイラスト ©めがねと旅する美術展実行委員会 / 塚原重義 / トワフロ

ー早速「押絵ト旅スル男」についてお伺いしたいのですが内容の深い短編アニメと伺っています。他のTVアニメなどと違って、意識しているポイントはありますか?

塚原監督(以下、塚原)そもそも普通のアニメ(TVシリーズ)を作ったことがないので何とも言えませんが、元々が短編出身の人間なので、今回の作品はその延長線上にある作品なんですよね。今までのノウハウの総動員と言った作品です。

 

ー制作の経緯を伺ってよろしいですか?

塚原 2018年7月20日から開催される「めがねと旅する美術展」(青森県立美術館静岡県立美術館島根県立石見美術館での合同開催美術展)で上映するアニメ作品の依頼をお受けしたことがはじまりです。同様の座組で2014年に開催された「美少女の美術史展」でも「女生徒」という太宰治の短編小説のアニメ制作を依頼して頂き作りましたが、今回もありがたいことにお声がけ頂きました。

もともと大正の香りが残る昭和初期くらいの文学作品を映像化したいなと昔から思っていて、それは前回の「女生徒」で一応念願は叶ったんですが、自分としては、もう少し大衆寄りの、例えば江戸川乱歩の作品を作りたいと思っていました。そうしたら本当に乱歩の依頼が来ました。逃れられない宿命です。

 

ーでは、監督のやりたいことと、依頼が偶然合致したといことでしょうか?

塚原 そうなんです。

迫田プロデューサー(以下、迫田) 今回のクライアントは3つの美術館なんですが、そこの学芸員は四年に一度共同で美術展を開催されていて、毎回新作アニメの上映も行っています。前回は太宰治の「女生徒」という作品でした。美術展なのでアカデミックな原作を採用してるというのもあると思いますが、文学シリーズが続いています。

 

ーということは、より美術的で雰囲気のある深い作品をイメージされたのでしょうか?

塚原 大まかにはそうです。基本は美術館によく来るような人や、目を持った人が見ても遜色ない作品にしないといけないと思いました。加えて、前回もそうですが、今回の原作もファンの多い作家、濃いファンの多い作家での原作で、もう50年以上ファンたちが議論を重ねてきているので、ファンに薄っぺらいと思われないように気を付けました。

 

ー美術品としてももちろん、原作のファンも納得いく作品を目指したということですね?

塚原 ただし、原作完全準拠というわけでもないです。「押絵と旅する男」は乱歩作品の中では純文学寄りとされていますが、僭越ながら今回のアニメではそれをゴシックな大衆文芸路線に少しだけ寄せて、娯楽作として構成を練ったつもりです。

 

ーそこは監督の采配ということなんですね。

塚原 原作は終わり方が、ふんわりとしていて、幻想文学とても良いのですが、映像作品としてそこをもう少しドン!とオーバーに強調し、満足度を高めるための変更を行いました。

 

ー監督自身も原作のファンだと思うのですが原作ファンの意見に対して恐怖心のようなものはありますか?

塚原 ありますね 笑。でも、そこは勇気を持たないといけないところなんですが、今回は僕自身も好きな作品なので勇気を出しました。そこは常に戦いだと思います。

遠方のスタッフとも作業が可能な作業環境とは

カンバン方式のタスク管理ツール「Trello」を利用した「Trelloコンテ」

ー作業環境について伺っていきたいのですが、今回の制作には何名ほどのスタッフが携わっているのでしょうか?

塚原 少ないと思います。自分(監督)やアニメーター(原画、動画)、音響まで含めても10〜15名ほどでしょうか。映像制作に関してはメインは5〜6人です。監督、プロデューサー、アニメーターさんが2人いて、あと美術で一人二人ですかね。

 

ー本日スタジオを拝見して思いましたが、皆さんで集まることは少ないのでしょうか?

迫田 そうですね。今までの制作現場は一ヶ所に集まってアニメを作ることが普通でしたが、今回のメインスタッフにはデジタル環境を活用しリモートワークで作業して頂いています。例えばappear.inというビデオ通話サービスで打ち合わせ、Trello(上記画像参照)というタスク管理ツールでの進捗管理、Dropboxでのデータの受け渡し、LineSlackでのコミュニケーションといった形です。これはメインスタッフ全員が作画も含めてデジタル環境に慣れているという事が大きいと思います。

 

ーほかのスタジオとは違うポイントなんですね?

迫田 そうですね。ですが他のスタジオもこのようなツールを使われていると思うので、決定的に違うというよりも我々はこうしているという話です。

塚原 普通はスタジオに来てもらって打ち合わせをするんですけど、今回はこのappear.inを使って、資料や映像をアニメーターさんたちと共有して打ち合わせを行っています。

 

ー極端な話、在宅でも作業ができてしまうと?

塚原 そうですね。同時進行で別の企画をしているのですが、そちらも在宅ですね。なんかそうなっちゃったんですが、そこも思惑があり、それぞれが働きやすい方向を選んだ結果こうなりました。どうしても通いたい方がいれば全然OK大歓迎なんですけどね 笑

 

ーお二人(監督とプロデューサー)は常にスタジオにいらっしゃるのですか?

塚原 はい。やはり理想をいえば作品の骨格となるメインスタッフは同じ空間で密に連携できるほうが良いとは思います。今作はスケジュールに割と余裕があるので、殆ど在宅で作業していただいている、という部分もありますね。

塚原監督の気になる制作手法とは

Adobe Premiere Proでのビデオコンテ制作作業画面

ーでは具体的な作業について伺いたいのですが、そもそも監督とはどんな作業をされるのでしょうか?

塚原 「これはどういう場面で、どんな絵が入るのか」をマンガのようなコマで示す「絵コンテ」という作業に入るのが通常ですが、僕の場合は先に「ビデオコンテ」というラフの映像を作ってしまいます。

 

ーではコマのような絵は描かないということですか?

塚原 絵は描くんですよ。つまり、紙の上に絵を切り貼りして並べるのではなく、最初から絵が連続したスライドショーを動画データとして作る、という仕組みです。もともと学生の頃の自主制作などは深く考えずにビデオコンテからだったのですが、その後は仕事で絵コンテから始める事もしました。そして何度も行き来しつつ、段々とビデオコンテ先行に定まった…という流れです。具体的には、Adobe Flashでシークエンス毎に作り、それをPremire上で並べて完成です。

 

ービデオコンテを作られるとのことですが、アニメーターはビデオコンテの映像だけを見て作画するということでしょうか?

塚原 いえ、絵コンテ自体は作ります。ビデオコンテを先行して作り、それをもとに絵コンテに起こすのです。絵コンテは文字情報も込みですから、ラフの映像では説明しきれない部分を記せます。あくまで、ビデオコンテと絵コンテは補完しあうものだと思っています。個人的には、両方そろって「コンテ」と呼んで運用したい感じですね。さらに、今回は実験的な試みとして絵コンテの代わりに「Trelloコンテ」なるものにも挑戦していたりもしますが…。

迫田 現在のアニメ制作現場は絵コンテ中心で動いていて、まだビデオコンテがあるプロジェクトは少ないと思います。塚原監督はもともとビデオコンテを作ることがフローに組み込まれています。デジタルツールを活用すると絵コンテを比較的容易にビデオコンテに出来ますのでビデオコンテ制作のハードルが下がりますね。

塚原 もとよりPCで絵を描いたり映像を作っていましたからね。さらに下の世代となるとよりデジタルツールが当たり前で、みんな最初からビデオコンテでやるようになるのではないでしょうか。

迫田 これからはよりデジタルという概念を「アニメ制作の構造の一部」として採用してくのだろうと思います。こういった流れは20代後半〜30代のデジタルネイティブ世代が中心になっていくと思います。我々も色々試行錯誤していろんなツールを利用していますが、この作品ではビデオコンテやTrelloコンテをチャレンジの一つとして採用しています。

 

ー色々試されている所なんですね。ビデオコンテ制作の次は何を行うんですか?

塚原 その後はアニメーターさんと作画打ち合わせ、略して作打ちをします。コンテを基に「ここはこう描いてください」「演技はこんな感じでです」「ここの人物はこんなことを考えています」という説明を行う、実際に描いてもらう為の打ち合わせです。


前編は以上になります。後半では、キャラクターデザイン、そして今作で特に力が入っている背景美術や撮影を中心とした制作裏話をお届け致します。

(取材・文 MoA)

(編集:JapanAnimeMedia編集部)

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