【スタジオ訪問】デジタルアニメ制作の新鋭!スタジオコロリドを紹介します

日本のアニメ制作現場を変えていくアニメスタジオ、その一番手だと思います。

現在、日本のアニメスタジオの多くは「紙と鉛筆」を使った制作方法でアニメを作っています。これは作業の細部こそ少しずつ変わってはいるものの、昔から脈々と受け継がれてきている日本ならではの制作方法といえるでしょう。

時代はインターネットやデジタルツールの全盛期となっています。アニメ制作現場には徐々にデジタルソフトやツールが導入されていますが、日本の制作現場の中心はやはり「紙と鉛筆」。そんな中、デジタル作画を制作方法のメインに据えた他のアニメスタジオとは違う新たな制作方法を推進しているアニメスタジオがあります。

そのスタジオこそが今回取材に伺わせて頂いた『スタジオコロリド』です。

スタジオコロリドとは?

陽向&ハシビロコウ 「陽なたのアオシグレ」

陽向&白鳥「陽なたのアオシグレ」

株式会社スタジオコロリド』は品川区というアニメ制作会社としてはとてもめずらしい場所にあるアニメスタジオです。

上の写真の「陽なたのアオシグレ」の監督:石田祐康さん、そして今年の6月5日劇場公開され、8月19日からBlu-ray&DVDも発売されている「台風のノルダ」の監督:新井陽次郎さん、そして日本アニメ(ーター)見本市で発表された「ブブとブブリーナ」の監督:なかむらたかしさんも参加する、若手とベテラン、そしてデジタルの力で素敵な作品を作り出している新しいアニメスタジオです。ノイタミナのオープニングアニメーションでご存知の方も多いかもしれません。

エントランスです

エントランスです

「スタジオコロリド」の独自性は後に紹介させていただく「デジタル作画環境」という所にもあるのは間違いないのですが、個人的には前述した「スタジオの場所」と「スタジオ内の広さ」にもあると思っています。数多くあるアニメスタジオの中でも東京湾を望めるアニメスタジオはここだけでしょうし、こんなにキレイで広々としているところも他には無いのではと思います。

今回はそんな抜群の眺めと広い制作環境で、デジタル作画を用いて新しい制作方法と表現を目指している「スタジオコロリド」にお邪魔して来ました。

デジタル作画のこれから、そしてスタジオコロリドの展望は?

左から新井陽次郎さん、しばたかなさん、栗崎健太朗さん

左から新井陽次郎さん、柴田佳奈さん、栗崎健太朗さん

今回、お忙しい中で取材に答えて頂いたのが「台風のノルダ」の監督の新井陽次郎さん、同作品で動画検査を担当された栗崎健太朗さん、そしてスタジオコロリドで設定制作を担当されている柴田佳奈さんです。

アニメ制作に熱い思いを持たれている新井陽次郎さんと、アノマロカリスを愛する栗崎健太朗さんの話はデジタル作画のみならずいろんな方向に盛り上がりましたが、やはり会話の節々から感じるアニメへのこだわりは聞いていてとても楽しく、また今後の新しい表現の作品などにも大きな期待が持てました。

スタジオコロリドの最終目標は「オールデジタル」

液晶ペンタブレットで作画をする栗崎さん

液晶ペンタブレットで作画をする栗崎さん

ー「デジタル作画」を中心として制作されてますが、スタジオとしてその制作方法をどのように取り入れていますか?またどのような方向性を目指していますか?

栗崎健太朗さん(以下、栗崎):まずコロリドが目指している最終目標としては「オールデジタル」です。全ての工程がデジタル化できればいいなと思っています。「ノルダ」の時は動画枚数に関しては手描きの方が多くなりましたが、周りのSTYLOS(デジタル作画ソフト)を使っている会社との連携も経験できましたので、今後の良い参考になりました。現状、長編制作においてオールデジタルは難しいかもしれませんが、ゆくゆくはオールデジタルで作っていきたいですね。

なんでオールデジタルにこだわるかという所なんですが、まず現在の制作方法ではデジタルとアナログが混在しているんですね。そうするとチェックする人がデジタルで描いたものを紙にする手間だったり、タップを張り替える手間だったりが生じてしまいます。またデジタルであってもソフトが違うと拡張子が違ったりするのでその変換が必要になります。STYLOSも独特の拡張子を使っていますしね。

なので制作の流れの中に様々な手間が生じてしまうんです。「ノルダ」に関しては原図からCLIP STUDIO PAINTで描いているのでスキャンという工程が要らないんですが、そのCLIP STUDIO PAINTで描いたものをSTYLOSに入れるというのもスキャンほどでは無いですが手間にはなったんです。特にコロリドの場合は少数精鋭なので、そういう手間を無くしてより動きを作ることやアニメーションを作ることに時間を使いたいなと思っています。現在はそういうことを実現できるソフトを探している所です。

ーよりクリエイティブに割ける時間を増やしたいということですよね。

栗崎:アニメ制作は沢山の絵を描かなければいけませんから、省けるところは省きたいと思ってます。また動かせる喜びを感じれるのがデジタルの魅力だと思っていますのでそういう気持ちで作っています。

デジタルのいいところは動きにこだわれる所

細かい動きをその場で確認できることもデジタル作画の魅力

細かい動きをその場で確認できることもデジタル作画の魅力

ー新井さんはどうですか?

新井陽次郎さん(以下、新井):そうですね。デジタルを使う意味って「動きにこだわれる」というところで、その為にデジタルを使っています。

ー新井さんは動きを作るのが好きですか?

新井:僕は最初、動きに対して執着はなかったんですよ。コロリドに来てデジタルで作り出してからそういう方向に興味が出てきました。

ー脚本や構成も大事ですが、動きで表現できるアニメを作ってみたいですか?

新井:そうですね、動きで表現できる作品がつくれたら、それはアニメーションである意味があるのかなと思いますね。

ー「ノルダ」もかなり動いてましたよね。

新井:どうなんですかね(笑)

栗崎:かなり動いていたと思いますよ(笑)

新井:他の劇場作品と比べるとどうなのかなとは思いますけどね。

ー動きが良かったな、と感じた作品はありますか?

新井:んー、沢山ありますが最近だと「電脳コイル」だとか、「西荻窪(西荻窪徒歩20分2ldk敷礼2ヶ月ペット不可)」などは動きがすごく良いなと思いました。それだけで魅力的だし、そこで伝えられるものはたくさんあるなと思います。

ー「西荻窪」や「かぐや姫の物語」などは原画の線を活かすような作品作りをしていましたが、そういう作品を作ってみたいと思いますか?

新井:ぜひやってみたいですね。それらの作品を見てちょっと違うかもしれませんが思ったのが、最近のCGや実写とかの技術ってすごい精巧でリアルなものが作られていますよね。海外のそういった作品を見ると、それらはCGや実写で出来ることを最大限生かして作られていてクオリティの向上がすごいなと感じます。それらを見た後に「手描きアニメってどうしたらいいんだろ?」とよく考えるんですよね。

最近、あんまり手描きアニメで精巧なもの、かっちりしたものを作ってもしょうがないんじゃないかなと思うこともあるんですよ。シンプルなキャラクターで手描きの気持ちよさみたいなものを追求していったほうが、手描きが残っていく意味があるんじゃないかなと個人的には思います。

手描きでやっている以上はパースなどの精巧さという意味ではパソコンには勝てないわけですよね。だから逆に手描きは崩していいんじゃないかと思います。僕はそういう方向に手描きの可能性があるんじゃないかなと思います。ただそういうものを視聴者が好むのかどうかという問題もありますが…。

役割、好きな作品、クリエイターについて

新井さんのデスクの柵の上

新井さんのデスクの柵の上

ー栗崎さんが担当されている動画検査とはどういうことを担当するんですか?

「ノルダ」の動画検査では「髪のなびき」にはかなりこだわりましたね。

栗崎:「ノルダ」ってアニメとしてはカロリーの高いことをやっていまして。舞台が学校なので沢山の建物や生徒がいますし、台風がきているので「雨粒の描写」や「髪のなびき」が必要になります。きっとこういう作画はTVシリーズだったらできないだろうなとは思いますし、ひと通り難しいことはやったのじゃないかなと思います。「髪のなびき」に関しては枚数でなびきのコントロールをしていました。東くん(台風のノルダの主人公)の髪ってふわっとしていて、こだわりの動きがあるので他の人が描いても崩れないようにしました。硬いなびきはなかったと思います。台風の中で学校に閉じ込められたという臨場感がテーマだったのでそこをこだわりましたね。

新井:あと栗崎さんの大きな仕事でいうと、外部との連携ですね。こちらでデジタルで作ったものをアナログに変換したりといった部分を調整してくれました。これは現在のこういった制作方法だから出てきている仕事であるともいえますね。そういった部分では栗崎さんのカロリーは高かったように思います。

ー影響を受けた作品やクリエイターはいますか?

栗崎:「クレヨンしんちゃん」や「メダロット」ですかね。陰がないシンプルなキャラクターなんですけど、わちゃわちゃしているのがとにかく楽しくて。キャラクターを少ない情報量でみせていて躍動感があるところが良いですね。自分も学生時代にそういうアニメを作ったことがありました。自分も書き込むことにはあんまりこだわりはないかもしれないですね。

デジタルならではの良い点、そして問題点

ちょっとわかりづらいですがMac miniが導入されています

ちょっとわかりづらいですがMac miniが導入されています

ーデジタルならでは問題としてデータの管理の難しさがあると思います。デジタル制作に取り組んでみての問題点や、やってみてよかったなと思う所はありますか?

栗崎:デジタルですと、カットの大変さがわかりづらいという点がありますね。カット袋に紙が入っているとその厚みで大変さがわかりますよね。でもデジタルだとフォルダ管理なので一見するだけではわかりません。ファイル名に枚数はどれくらいかの情報を書いてはいたんですけど、やっぱりそこだけだと分かりづらかったり。

あとはSTYLOSで使えるデジタルのタイムシートがあるんですが、手描きで使える6秒シートと違って下にスクロールするとセル数なんかもどんどん増やせるんです。なのでアナログだと何枚の6秒シートが入っているかで物量がわかるんですが、デジタルのシートだとわかりづらいですね。目視できることの重要さを感じました。「ノルダ」以降の作品に関してはアナログのシートを入れるようにしました。

新井:栗崎さんが言っていたことはSTYLOSが完全でないために出てくる問題なんですね。タイムシート機能は使いやすくていいとは思うんですが、現状は外部の環境に合わせる為にタイムシートで管理しているという状況がありまして、個人的にはタイムラインでもいいと思っているぐらいなんです。いままでのコロリドは連番に色を塗ってもらって、ムービーを書き出しして、その後に撮影処理をかけるという変わったことをしていたんです。

いま起きている問題は、既存のアニメ制作システムでやっていることをデジタルでやろうとする、外と連携することを考えるがゆえに起こる問題なんですね。まわりが変わってきてくれたらタイムシートという概念が必要なくなるかもしれないですし、個人的にはその問題を解決してデジタルで一貫してやれればもっと先に進めると思うのですが。先っていうのは、効率良く、こだわりたい動きに集中して時間をさける制作体制ということですね。こういうシステムが実現するのは時間の問題だとは思ってます。「ノルダ」ではコロリドでも初の試みが多く、苦労は多かったです。

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「ありがとう」はリップシンク

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ノルダの口の動きです

栗崎:いままでのコロリドの作品は社内で作っていたので、すぐにプレビューができたりムービーをそのままAfter Effectsのタイムラインにのせるなどといった連携が取れていましたが、「ノルダ」の制作で外部との連携をする際にはこれらが裏目にでたことがありました。タイムシート問題でしたり、コロリド独自のルールを外に向けるためにどうしたらいいかという指針がうまく示せなかったですね。なので今はどうすれば撮影さんや仕上げさんがやりやすいと思える素材作りが出来るのかが見えてきた、この点が良かった点ですかね。あとデジタルのメリットはやはりスキャンが要らないことですね。

余談ですがSTYLOSのいいところって落書きが簡単にできるところなんですよ。ふと思いついて落書きをしてみて、それを動かしてみるみたいな事が簡単に出来てしまうので、そういうのがデジタルの利点で自分的にはプッシュしたいところの一つです。

これからの作りたい作品は?

ノルダの作画

ノルダの作画

ーこれから使っていきたい技術、作っていきたい作品はありますか?

栗崎:「くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ」みたいな作品ですね。少ない情報量で、動きで魅せる作品。普段の何気ない仕草や振り向きなどで、そのキャラクターのひととなりが見えてくる。細かい仕草の絵だけで受け取れたっていうところが良くて。作品の没入感がすごかったです。あんなことができたら楽しいだろうなと思いました。

新井:個人的な話ですが、エンターテイメントなので感動させることもそうなんですが、人を笑わせることをやってみたいなと思っています。アニメーションって表現を誇張したりできるじゃないですか。そういうことってギャグとかコメディとかに向いていると思うんですよね。例を出すと昔の宮崎さんの「ルパン」や「天空の城ラピュタ」などの誇張された表現の方がアニメーションとしてやる意味はあるのかなーと思いますね。

「アニメならでは」の表現とは

「台風のノルダ」の監督:新井陽次郎さん

「台風のノルダ」の監督:新井陽次郎さん

最近はどんどん趣向が変わっていって、今はジブリにいた時と真逆の考え方になってますね。

新井:最近はどんどんと趣向が変わってきていて、でもその変化がすごく面白くて。アニメでやるならたとえばオバケ(アニメの技法の一つ)を使ったりですとか、キャラクターも崩してしまってもいいと思うし。「きっちりしたもの」という気持ちもありますけど、「アニメならでは」という表現もやってみたいなと思っている。

ギャグをやっても、リアル系でもおもしろい。今はとにかく色々吸収したいと思っています。結局、他人の作品をやらないと自分の中の引き出しが増えないのでもっといろいろ吸収してそこから作っていきたいです。それでいうと今はギャグ的表現が自分の中では熱いです。石田くんも「フミコの告白」でやってましたけど、ああいう方が作っていて面白いですよね。

ー今後のスタジオコロリドの作品にギャグはありなんですか?

新井:ありなんじゃないですか(笑)。

栗崎:ギャグっていうより、コメディみたいな。突拍子もないギャグもありますけど、芝居をしていて自然に出てくるギャグシーンみたいな。

新井:キャラクターっぽいギャグや、表現としてのギャグはやってみたいと思います。キャラクターっぽいギャグはそのキャラクターを描く上ではとてもおもしろいことだなと思いますね。

「崩れていること」の個性、手描きアニメのあるべき姿とは?

新井さんに描いて頂きました

新井さんに描いて頂きました

新井:僕が思うディズニーやピクサーのすごい所って、細部にこだわれるはずのCGにおいてキャラクターをシンプルにして、柔らかさだとかそういうものをスタジオの中心に据えている姿勢なんだと思います。その部分に共感できるしすごいなと思います。CGで上手に崩していくという作業はすごく大変なことです。しかしそれが手描きだったり絵である良さだと思います。崩れていることに個性があるというか。

ー「台風のノルダ」はオーストリアのBahiJDさんが参加されてました。これからの作品の海外展開への意識、また海外からのクリエイターの受け入れについてはどう思われますか?

新井:これから増えていくんじゃないですかね。海外のクリエイターでコロリドに興味がある人は是非応募して欲しいと思います。そういう海外からの人がいることで新たな刺激になったり、国をまたいだ新たな交流ができるのではないかと思います。

休みの過ごし方、夢中になれる作業

アノマロカリス大好きの動画検査の栗崎健太朗さん。左のアノマロカリスを描いて頂きました。

アノマロカリス大好きの動画検査の栗崎健太朗さん。左上のアノマロカリスを描いて頂きました。

ー休みの時は何されてますか?

栗崎:映画見たりとか、博物館行ったりします。最近行ったのが国立科学博物館で開催されている「生命大躍進」です。アノマロカリスの化石を初めて見ました。いずれ怪獣作品を作ってみたいという野望があります。でっかい生物が出るやつ。

新井:アニメーションでやるとおもしろそうですね、そういうの。

栗崎:アノマロカリスがうにょーって動いているみたいなの笑。アノマロカリス君みたいな笑

新井:ネット上で週一とかでアニメを公開したりしてみたいですね。

ー新井さんは休みの時は何されてますか?

新井:基本は寝ていたいのですが、暇があれば絵を描いたり、ふらっと電車に乗って出かけたり、最近だとジムに行き始めてます。アニメを作る体力維持のためなんですけど笑。あとはやりたい事の企画の構想が沢山あるのでそれをどう表現するかの参考として展示会とか見に行ったりします。基本は作りたいモノの為に行動していますね。

ーやっていて夢中になれる作業はありますか?

栗崎:作業自体が大変なものばかりなので夢中と言っていいのかわかりませんが、作ったものをプレビューで見た時とか、作品が出来上がった時とかに報われるなと思います。

新井:絵コンテとか。原画とか…。絵を描いている時は大抵夢中になってやってます。

これからのスタジオコロリドの作品がホントに楽しみです

スタジオで出会ったノルダパネル

スタジオで出会ったノルダパネル

忙しい中で沢山の時間をとっていただき色々な話を聞かせていただく事ができました。この場所でこれからの日本のアニメの作り方が生まれていいくのだと思うと、とてもワクワクしましたしその新しい作り方で生まれる新たなアニメーターの働き方やビジネス、表現方法などにもこれからも注目せずにはいられない気持ちになりました。

お邪魔した当日はあいにくの雨模様で本来だったら見えている素晴らしい景色が見えなかったのが唯一の残念な点でした….。ぜひ紹介したかった。株式会社スタジオコロリドの詳しい情報は公式HPで公開されてますので、気になった方は見てみてくださいね。

スタジオコロリドの公式HP

(取材、撮影:迫田祐樹)

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