京都精華大学の坂本拓馬先生、大橋雅央先生に話を聞いてきました!

次世代のアニメは京都から生まれるかも。

先日、京都精華大学でスタジオコロリド制作作品を使った「デジタル作画セミナー」そして「京都発信、セルアニメ新時代! ~京都におけるアニメ人材育成・業界変革・産業振興~ 」をテーマにした「セルアニメ新時代研究部会」が行われました。

その「セルアニメ新時代研究部会」に先立ち、登壇予定であった現役の京都精華大学の教員である坂本拓馬先生、大橋雅央先生にお話を伺ってきました。京都精華大学という場所、そしてアニメーション学科で学べるものとは一体?

坂本拓馬先生

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CGIディレクター・演出。2001年スタジオ4℃入社。

07年『鉄コン筋クリート』では、第7回映像技術賞、第11回日本映画テレビ技術大賞を受賞。多くのOVA・劇場作品でCGI監督を勤める。主な作品に『魔法少女隊アルス』(CGI監督)、『Genius Party・デスティックフォー』(CGI監督)。

11年~12年『ベルセルク・黄金時代篇Ⅰ覇王の卵』、『ベルセルク・黄金時代篇Ⅱドルドレイ攻略』では演出を務める。

大橋雅央先生

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アニメーター。2000年よりアニメーターとして東京の作画会社に所属。

その後、大学院にてアニメーション産業関連の研究に従事。現在はフリーアニメーターとして主にテレビアニメシリーズなどの作画に関わるかたわら、研究者としても活動。

東京・大阪にて小さなアニメーション制作スタジオを主宰し、ショートアニメーションの制作なども行っている。

京都精華大学のアニメーション学科について

ーー「京都精華大学のアニメーション学科」という場所が持っている特徴とはなんでしょうか? 環境だったり設備だったりなど、色々あるかとは思うのですが。

大橋雅央先生(以下、大橋):そうですね、私は学科の中では作画の担当なんですが、実はアニメーション学科には作画をしたい学生は意外と少ないんですよ。進級する度に減っていきますね。7、8人に1人くらいでしょうか。マンガが描きたかったりゲーム作りに参加したいといった希望を持っている学生も一定数います。絵を描くことが好きな学生は沢山いますけど、いざ紙と鉛筆を使って「動かす」となると難度が上がって苦労してる学生が多いですね。

私は以前、専門学校でも教えていたんですが専門学校ですとアニメの仕事に就くと決めて来てる学生が多かったのでそこに違いは感じます。アニメーション学科としてはまだ将来的な展望を定めきれずに来ている学生がいるかなというところです。

ただアニメーションとは絵を描くだけが仕事ではなく、例えば制作進行でしたり彩色でしたり音響でしたりと色々あります。うちの学校は音響関係の施設が充実しているのは特徴ですね。そういったところも含めてアニメーション関係の仕事について「何か作りたい」という願望を持つ学生達を幅広くケアしていければなと思っております。

ーー実際に京都精華大学の学生に話を聞いてみて意外に思ったのは、学科として「紙と鉛筆」での作画に力を入れられているところでした。スタジオコロリドの石田祐康さんのようにデジタルで作品を作られる方の卒業校なので、授業もデジタルを率先して教えられているのかという印象がありました。

坂本拓馬先生 (以下、坂本):そうですね、基本的なインプットはアナログで徹底しています。CGの授業も多いのですが、それでもまずはデッサンから入って「基本的な物の捉え方」「造形の捉え方」といった基本をしっかりやり、その後にデジタルをやっていこうと思ってます。今回のテーマ(インタビュー時は「デジタル作画セミナー」の直前)になっているデジタル作画もこれからまさに実施しようとしていこうというところです。

大橋:学生が個人的な作品をデジタルで作画しているいうことはあります。ですが学校としての指導は行ってないんです。来年度以降、デジタル作画の教育も取り入れていこうと思っているところです。最近は液晶タブレットの値段も下がってきているので個人でも導入しやすくなりました。以前は学生ではちょっと手の出せない値段でしたからね。

ーー坂本先生が今後掲げられている教員としてのビジョンはありますか?

坂本:本当にこれからですが現在の古い形の教育にはまだまだ改善点はあるとは思いますので、今の教育をベースに新しい要素をどんどん導入していって学生にもっと魅力的なアイディアや教え方をしていこうと思っています。

でもただ楽しいだけではダメで、世の中に出て「使える技術」を教えていかないといけない。特にCGの世界は去年までスタンダードだったものでも今年ではもう古いものになってしまう。それほど技術の発展が早いので、教育現場ではその技術革新についていくのは大変ではありますね。

大橋:京都精華大学には設立当初の三本柱に「CG、作画、理論」が掲げられていたんですよ。

坂本:そうですね、ここは大学なので専門学校では教えてもらえないような理論的なことを教わる授業が存在します。そしてこれからはデジタル作画も含めて教育していくような変革の時期に来ているのかなと感じています。

アニメーションの制作環境、制作システムについて

ーー坂本先生が京都精華大学で教員になったきっかけとはなんだったんでしょうか?制作現場から教育現場へとなりますが。

坂本:いろんな要因が重なったんです。僕はもともとここ(京都精華大学)卒業だったんですけど、前はSTUDIO4°cに13年ほどいて多くの作品のCG監督を担当していました。そろそろ次の展開を考えていこうかという時にたまたまお話を頂いたんです。フリーランスや他のスタジオなどの選択肢もありましたが、僕や奥さんの地元が京都というのもあり子供も小さいしという事でこっちに来る決心をしました。この業界ではひとつの会社に13年勤めるというのは結構長い方ですかね。

大橋:長い方ですよね。アニメの現場は流動的で横の移動が多いですから。

ーー今回の研究部会に登壇されるライデンフィルム京都スタジオの坂本一也室長は「勤務体系の健全化」を前提としたクリエイターの働きやすい環境を目指したアニメスタジオを運営されてますが、大橋先生は現行のアニメ制作の環境についてどのように考えられていますか?

大橋:私も実は10年ほど前から研究していますが、アニメーションの現場の人間が食べれないという問題、特に初期キャリア(動画の段階)で稼げずに東京で生活するのはきついという状況があると思っています。そこでは考える子ほど経済問題や将来的な展望を考えて辞めていくケースが多いんです。技術的な壁に当って辞めていくのは仕方がないことですが、絵を描ける子が諦めるのがもったいないと思います。よくよく聞いてみるとその後ゲーム会社に入っていたりなどと聞くこともあります。

動画の子が定着するようなそのシステム作りは将来を考えた時にとても大事だと思います。制作者側も効率を考えると海外に発注する方が楽ということがあり、実は国内には動画の仕事は少ないんです。時間的な手間や経済的な観点で見ると海外にいってしまうんです。そこで国内に回ってくる仕事というのは海外に出し遅れたような、内容がすごく重いカットだったりします。仕事を通して技術を学ぶOJTという点を考えると新人がいきなり難しい仕事を受け持ったりすることもある訳で段階を踏んで仕事を学べませんし、単価制が多い動画の仕事では、当然もらえるお金も減ってしまいます。

私はこの問題に対して先行研究をあらおうとしました。しかし当時、かろうじて経済産業省やJIL(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)がレポートを出していましたが、他には資料がなかった。そこで大学院生になり「研究者」として肩書きを得て研究しようと思ったのです。結果、業界全体を変えようとしたが「それは無理だ」という結論に至りました。そこで自分の身近なところから食べられるようにしていこうと思ったんです。

テレビでの放映や映画館での上映という出口が決まってないとほとんど作れなかったアニメーション作品も、近年ではインターネットの普及などでテレビや映画以外の公開の場も増えてきています。テレビや映画だけに出口を求めないアニメーション制作がアニメーション作りの一つのモデルとして高い制作費で作られるようになってくれば、それがテレビや劇場の作業単価も押し上げるのではないかと考えています。

作業単価が上がればアニメの制作現場の労働環境にも良い影響があると思いますし、そういった点はライデンフィルムの坂本さんの目指されているものを後押しすると考えます。

例えば京都でそういった新しいアニメーション制作システムが機能し始めて「京都の仕事の単価は高い」「労働環境が良い」となったら東京からでも仕事を求めて京都へやってくるアニメ制作者もいるでしょう。そうなれば京都からアニメーション制作に新たな流れみたいなものが生まれ出てくることにもなるかと思います。

今後のアニメ視聴のプラットフォームは?

ーーVOD(ビデオオンデマンド)サービスのプレイヤーがアニメーションのオリジナルコンテンツを作ったりする未来もあるかとも思うのですが、アニメ視聴は今後どのように変わっていくと思いますか?

坂本:とはいえまだテレビや映画がお金を稼ぐ主体にはなっていると思います。ネットだと例えば最近はネット配信限定のアニメがあったりしますが、ネット配信でどのくらいお金が入るのかはしっかりリサーチしないととは思います。それがこれからの課題だと思いますし、収益を上げるのはそんなに簡単ではないとは思います。

大橋:テレビアニメなどもそうですが、最近はアニメ自 体で稼ぐことを主眼にせず、アニメで話題性を作ってそこからキャラクタービジネスを展開していて、アニメ映像はあくまでキャラクターを売るためのPR映像のようになってます。ネットのアニメなどでもそうで、当初は予想もしていなかった人気が出てキャラクタービジネス展開した作品もあったりします。単純に映像だけで稼ぐことを目指すのではなくて、キャラクターを売ることを視野に入れた作品であればネットのみでの展開もありうると思います。

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