「地下鉄に乗るっ」が生まれる現場に潜入して来ました。墨田区にあるアニメスタジオ魚雷映蔵の実態とは?

今回お邪魔させていただいたアニメ制作現場は、クラウドファンディングで話題の「地下鉄に乗るっ」(京都市交通局)のアニメ制作されている株式会社魚雷映蔵。全体の統括から企画提案、京まふでのイベント出演やクラウドファンディングに関わる全般を担当されている、代表取締役 / プロデューサーの佐野リヨウタさんから貴重なお話を伺うことが出来ました。

魚雷映蔵とは?


ー魚雷映蔵についてお聞きしてもよいでしょうか。

僕個人はもともとフリーで実写の広告映像などを作ってましたが、実写の世界だとやっぱり欧米中心の海外志向が強いんですよね。だったら、日本人だという優位性を持って世界へ発信できるクリエイティブで勝負したいという思いから、魚雷映蔵ではアニメ制作に着手しております。

弊社メンバーは基本的には京都で自主制作アニメを作っていたメンバーで構成されておりまして、TVアニメなどの制作現場にいた経験があるスタッフはおりません。そのためか東京に来て既存のアニメ制作会社と仕事をご一緒させて頂くことが増えましたが、考え方の違いを感じることが多くなってますね。

ちなみに弊社はアニメ制作会社というよりデザイン会社に近いと言われる事が多くて、クライアントさんのニーズを吸い上げて提案〜制作の最後まで完結できるという所に強みがあると思ってます。

「地下鉄に乗るっ」の制作について


ー「地下鉄に乗るっ」の制作に関してお聞かせ頂けますか。

このプロジェクトについては企画から制作、クラウドファンディングなども行っているので、弊社としても比重が大きいプロジェクトとなっています。

アニメーション制作については、企画〜制作(脚本、絵コンテ、作画など)までを担当しており、背景制作と撮影(絵を繋げて映像にする工程)は外注になってます。ちなみに作画はデジタル作画を行っており、使用しているソフトウェアはCLIP STUDIO PAINTです。

ー作中で注目のシーンなどはありますか?

作中で見てほしいというよりは、実際に地下鉄に乗ってほしいですね。そうすると「ああ、あのシーンだな」と感じてもらえると思います。この作品はロケハンもしっかりしましたし、作中には登場しないですが、登場人物の住んでいる場所の設定があります。ですので学校に行く時に使うホームと、帰りのホームを描き分けをしたり「この駅のこの場所だったら登場人物同士が出会うかな」といった計算はしっかりしています。日頃から京都市営地下鉄に乗られている方にはすぐに分かるし、アニメを見て興味を持って乗ってもらった方々にも「なるほど、ここか」と分かってもらえると思います。

クラウドファンディングの実施について

ー達成された数字を見るとすごい金額だなと思いますし、そこには綿密な計画や表には出てこない苦労があったと思います。

このプロジェクトではまず京都市交通局さんの15秒CMを制作したのですが、その映像の再生数が全然伸びなくて不満だったんですよ。ですので僕が運営していた自社Twitterを使って映像のPR発信するようになったんです。そうすると続けていくうちに徐々にバズるようになってきてそれが楽しくなってきちゃったんですよ。もともとマーケティングが好きなので勉強になるなと思っていたのですが、徐々にTwitterでの発信のノウハウも分かるようになってきました。

そのようなネット上での活動はずっと行っていたのですが、大きな転機は「京まふ」というイベントに出演したことだったと思います。実はイベント裏話なんですが、当初司会者がいると聞いていたのですが当日司会がいない事が分かり「佐野さん出来ませんか?」という話になって急遽出演したんですよ。個人的には半分くらい席が埋まっていればいいな、と思いながらイベントに臨んだんですが立ち見も出るくらい盛況で、ステージ上がっているときは冷や汗かきっぱなしでした。しかしその時に初めてネットでの反響がリアルと直結した感覚があったんです。僕のこと知ってる人なんて殆どいなかったと思うんですけど「アニメ作っている魚雷映蔵です」と紹介させて頂くと非常に盛り上がったりして。

そこで今まで作ってきていたネットでの影響をリアルで還元できる可能性を感じたので、クラウドファンディングを京都市交通局さんに提案させてもらったんです。「100万円集まったら30秒作ります」という形で開始させて頂き、ありがたい事になんと1,000万円も集まって最終的に12分のアニメが出来上がりました。

ーいろんなメディアで同様の質問を受けられているかと思うのですが、佐野さんが思う「地下鉄に乗るっ」がクラウドファンディングで成功した理由はどのように思われますか?

まずは地元民にある程度の認知度があったという所があると思います。そこに行政が取り組む施策としての革新性として、徹底的にデザインが作り込まれている所が大きいと思います。そもそも本プロジェクトは、デザイン会社であるGK京都さんが企画なさっているので、クリエイティブには相当こだわられています。そういった意味で総合力が高いコンテンツだと感じます。

そんな京都の行政がこういったアニメーション施策をやっているという所を見て興味を示して頂いたのかなと思います。現場では、熱が入るあまり、GK京都さんと盛り上がってしまって、採算度外視な企画も何度も立ち上げて来ましたが「楽しいからやっている」という空気が関係者間にもあるので、もしかするとそういった空気も感じとってもらっているのかもしれません。

 

ーマーケティングに関して。

僕の信条としてはアニメ以外の所からのインプットを大事にしています。常に心に余裕をもって今何が流行っているのかな、とリサーチしたり、面白そうなイベントがあったら顔を出してみるとか。または異業種の人達との交流から生まれる新しい気付きは沢山あって、それを上手くアニメのディレクションに落とし込めるようにしています。

経験としてニーズがあるなと思う部分をそのまま狙っていくと結果ちょっと下回っちゃうので、流行っている事があったらそのままやるのではなく「こういうのも好きだろう」という形で角度を変えてやってみるという事は意識しています。トレンドについて行くだけじゃなくて自分から発信していかなければならないので、常に半歩先を行くという意識でいます。

ー今回大きい金額を達成されましたが、実際にはクラウドファンディングをする為の人件費だったり、プラットフォーム側への手数料やリターンの生産原価、発送費、それにアニメ本編の制作費を考えると利益は殆ど無いのでは?と思うのですが、もしお聞かせ頂けるのであればそのあたりはどうなのでしょうか?

はい。めちゃくちゃ赤字です(笑)そもそもそのつもりで企画したので構わないんですが、予想以上でしたね…。でもこのようにお金が出して頂く方が集まって制作費になり、作品の事をみんなに知ってもらいそして色々な方との繋がりが出来ている事はとても大きな収穫です。また弊社のような小さい会社でもこれだけ話題になるモデルケースを作れたということもありがたいことです。

8月5日「地下鉄に乗るっ」イベントについて

ーそんな中出来上がった「地下鉄に乗るっ」の12分のアニメーション。8月に東京で開かれるイベントで上映されるとのことですが。

クラウドファンディングでの皆さんのご支援のお陰で12分の短篇アニメが完成しまして、その上映会として企画しました。そもそも5月27日に京都で上映会を開催したのですが、それが大変反響がありまして、遠方にお住まいの方からは「行きたかったけど遠くて行けなかった」などと言う声も聞かれました。そこで、京都の次にクラウドファンディングの支援者が多かったのが東京都ということもあって、東京でも開催する運びになりました。京都では、何よりもまずアニメの初お披露目がメインで、声優さんとのトークショーや主題歌を歌って下さっている大木ハルミさんのライブなどのサブイベントと抱き合わせての開催でした。ただ、今回の8月5日の段階では、既に支援者の方にはリターンとしてDVDが届いている頃ですので、京都でのイベントとの差別化を図るため内容にも趣向を凝らしています。

イベント自体を2部構成にしておりまして、アニメ上映後にそれぞれイベントを用意しています。第1部は私を含む「制作者によるトークショー」ということで、これまでほとんど公の場に出て来られなかった「地下鉄に乗るっ」のキャラクターデザインを担当するイラストレーターの賀茂川先生に登壇いただくことになっています。GK京都のデザイナーさんにも京都からお越しいただき、今だから話せる制作秘話なども語ってもらえればと思っています。第2部については、主題歌を歌っていただいた大木ハルミさんのワンマンライブなのですが、京都よりも長めの時間で演奏いただこうと思っておりますし、限定販売のグッズとして弊社とのコラボグッズも販売します。

初めての東京でのイベントでして、本当に人が集まるのか心配だったんですが、お陰様で第1部は完売で、第2部も予約状況は上々です。いずれも「地下鉄に乗るっ」ファンなら絶対に満足してもらえるイベントになると思いますし、第2部は今からでもご予約間に合いますので、ご興味のある方はぜひお越しいただければ幸いです。

「地下鉄に乗るっ」アニメ上映会@東京

8月5日(土) 原宿ストロボカフェ

 

【第1部】制作者トークショー ※既に完売

MC:大久保照子(都くん役声優)、竹村かな(太秦麗役声優)

トークゲスト:賀茂川 ほか

時間:OPEN 13:15 / START 14:00

料金:CF支援者 1500円 / 一般 2500円 +各1ドリンク(500円)

 

【第2部】大木ハルミ ワンマンライブ

MC:大久保照子(都くん役声優)、竹村かな(太秦麗役声優)

ライブ:大木ハルミ

時間 OPEN 17:00 / START 18:00
料金 予約 2500円 / 当日 3000円 +各1ドリンク(500円)

 

詳細及びご予約は http://gyorai.net/event/


今回は、株式会社魚雷映蔵の佐野さんにお話を伺うことが出来ました。実写映像や広告の業界からアニメ制作会社を立ち上げられ前職の経験を活かした展開をされており、今後どのような活躍をされていくのか注目ですね。ちなみに京都から東京へのお引っ越しされてきた墨田区両国なのですが、JapanAnimeMedia運営元の弊社トワフロのご近所でした。墨田区にある数少ないアニメ制作会社同士、これから制作でご一緒出来る機会があればと思っております。佐野さん是非よろしくお願い致します!

(取材、文:迫田祐樹)

(写真:Zhu)

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