京アニ、藤田春香の真骨頂!「おまつりトライアングル」の考察してみた

京都アニメーション次世代の演出家、藤田春香さんが羽ばたいたエピソードとして後々に語り継がれるエピソード、それが響け!ユーフォニアム第八話「おまつりトライアングル」です。

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アニメ的な「良い脚色」のお手本のような演出、アクションカットのつながりが感じさせるスピード感、素晴らしい群像劇を助長するカットの軽やかなつなぎ、会話のテンポ、どれをとっても至極の30分弱を提供してくれる神回です。

今回も構図などがわかる簡単な画を用意しましたので、それらを見ながら考察していきたいと思います。

脚本:花田十輝

絵コンテ、演出:藤田春香

作画監督:秋竹斉一

楽器作監:高橋博行

Aパート

教室シーン

藤田春香さんの特徴でもある、短く素早いカット繋義。葉月の気持ちを表すように慌ただしくカットが繋がれ、慌ててる感覚が見ている方に伝わってくる。

秀一と目があった、と勘違いする葉月。

あまりにも短い尺のワンカットの為、理由作りなのかは不明。このエピソードは全体的に登場人物たちの祭りへのはやる気持ちの表現を素早いカット繋ぎで体現しているような感じです。

低音パートの教室

低音パートの練習中の教室。会話の内容は色恋沙汰の華々しい内容だが、BGMはなく、物語前半の空模様も前回の話をどことなく引きずる曇天模様。相変わらず引きのショットなのにキャラクターの演技が細かい。

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BGM無しSEのみで映像に緩急をつけているのが、どことなく全体を通して映画っぽい雰囲気。

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チューバ女先輩可愛くなってない?

合奏パート

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矢継ぎ早に部員たちのカットが繋がれる。こういう大人数の空間は目線が言葉以上に物語る。この目線での会話から学生時代の良い思い出も悪い思い出もぶり返させます。

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まっすぐ前をみる久美子、その久美子を見る秀一、その秀一は麗奈の視線に気づく。麗奈は秀一の目線から久美子への思いを当然察しているのだろうが、麗奈の本心は一体どこへ。

合奏シーン後

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なんか面白いすばやいトランジション。こういうカメラワークめずらしいかも。

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「秀一に一瞬目配せしてからも無視」というこういう細かい演出の繰り返しで、久美子とキャラクターは醸成されていく。

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ベンチ

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このベンチのシーン、よく出てくるキーカット。この後祭りで葉月と秀一が同じ構図で座ることになる。対比。
秀一がまずは一緒に練習しようと誘う。これに対しては軽くいなす。カメラも前のシーンから同様に引き→寄り→さらに寄り→引きと繰り返す。

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次のシーン。秀一が万を持して県祭り(あがたまつり)に久美子を誘う。これに対して久美子の目線をあらわすカメラは秀一の顔のアップに切り替わる。葉月を見る目と同様にカメラは所在なく彷徨う。しかも今回はピントもうまく合わない。相手がなにを言ってるのか理解できないさまを映像で表現した形だ。まさに青天の霹靂を映像化したような感覚でしょうか。

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翌日

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雨のシーン。夏服かわいい。まだまだ雨ですよ、と印象づける。

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教室。久美子が事態を考察中。久美子が書いた線がとてつもなくきれいなのはご愛嬌。

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このシーンではファニーな雰囲気をつくりたいのか、珍しくアイキャッチなデフォルメキャラで三人娘が登場する。漫画チックな効果線をつけた登場の秀一もいたりとこのエピソードの中では箸休め的な映像効果をもたらす一連のカット群ですね。

43合奏室

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合奏室のシーン。こういった大人数が一斉に介するシーンでは、各々のキャラクターの視線が言葉よりも雄弁に語ります。しかし言葉よりも受け手側の広がりがある「視線での会話」、案の定、秀一は間違った解釈をした模様。

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久美子の動きでなにかを察した秀一は、追いかけようして話していた赤松に声をかけます。その声がOFFセリフでカメラは葉月を写します。今度は視線ではなく聞こえてくる声で状況を察します。

合奏室の外

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けっこうトリッキーな構図が続きます。

まずは楽器のアップから秀一が出てきて、久美子と下からのアオリのショット。その後、天井からの俯瞰のショット。ここで目線の高さのショットを入れずに俯瞰ショットを使うことで、視聴者に「覗き見」的にこのシーンを見てほしいと狙っているのかなと思います。

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葉月が出てきます。決死の覚悟。久美子と目配せ。やっぱり目線で語ります。ノンバーバル・コミュニケーション。目配せの演出、学生時代の甘酸っぱい思い出が蘇ってきます。

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ここで久美子と麗奈のお祭り展開へと発展するわけですね。

靴箱

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靴をぱたっと落とす久美子。こういういかにもな学生あるあるをやってくる所に好感が持てます。ここでようやく外は晴れました!という背景効果が入ってきます。これからせまる県祭りへの期待感が助長されます。

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Bパート

祭りの前のつなぎ

ここからが初夏の夕暮れ特有の「青の時間」。

青白い光が人や川や建物に反射してとても不思議で、すこしの間だけ異世界にいるように錯覚させてくれる空間を多彩な色彩で描いています。お祭りのワクワク感というのは、大人になってからだとイマイチ感じにくくなりましたが(自分だけか?、)学生の時は永遠に続いていくような学生生活の間に少しだけ訪れる非現実のように捉えていたのかもしれません。

県祭り

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低音カップルのシーン。

先輩たちが各所で登場します。京都アニメーションは中の人は女性が多い。故に服装のディテールが女性目線でとても可愛い。

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仲が悪そうな二人がなにげに射的を一緒にやってるところが微笑ましい。

駅前

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京アニは視聴者が「観たい!」と思っている所に効果的にアップの絵を持ってくる気がします。今回の場合は緑輝たちと別れた葉月が空と織姫と彦星(?)の看板を見上げた後に期待と不安いっぱいの表現をアップの画で表現。カメラが被写体にグッと寄ることで視聴者もグッと被写体の気持ちに引きつけられます。

神社

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久美子と麗奈の名シーン群。この辺りのシーンのカメラの構図は結構、広角気味な気がします。

久美子が階段を登るところ。青に染まる景色を楽しみながらそこで繰り広げられるキャラクターの楽しい駆け引きが楽しめるシーンがこれから次々に登場します。

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かわいいワンピースの麗奈。女社会の京都アニメーション。女の子の服装はほんとかわいい。久美子との対比。久美子は自分の靴を見る。このエピソードでおしゃれをしていないのは久美子と秀一だけ?

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カメラが麗奈をフォローしながら画面左にPANしていくカット。麗奈の作画もさることながらとても美しいPANです。麗奈のワンピースは久美子いわく「まっ白」らしいですが、この舞台では青白く光ってます。

山登り

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ここで語られるのは麗奈の本心。ジュブナイル。淡い青春の一端。麗奈はいつも右から左にどんどん進んでいく。常に未来を見て進んでいる象徴。カメラはその美しさをずっと保持したいようにフォローしていく。たなびく黒髪がとても艶かしい。「たまにこういうことしたくなるの、制服を着て学校へ行って、たまにそういうのを全部捨てて18切符でどっかに旅立ちたくなる」

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階段を見せずに階段を登っているとわからせるカット。とてもおもしろい構図。

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76「ずいぶんスケール小さくなっちゃったね」「それは仕方ない、明日学校だし。」目線が泳ぐ久美子。目線が語るこのアニメ。目線作画には手間をかけます。この目線のゆらぎがこのアニメに味わいです。そしてこのアニメが他とは違う何かを感じさせる部分かもしれません。

77髪を結ぶ麗奈。脇作画。なんでしょうこのフェティシズム。「白ワンピースにユーフォもたせてるの背徳感がすごい」

この辺りから久美子の変態発言が吐露されていきます。久美子に対して心を開いてる麗奈に呼応するように久美子も心を開き変態発言を繰り広げます。

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きました、メタ作画。ハイヒールの紐に傷つけられるアキレス腱描写。女性社会の京アニ。女性あるあるを如実に出してきます。「足、痛くないの?」「痛い、でも痛いの嫌いじゃないし」ここで髪が乱れてる麗奈の横顔。発言と合間見合ってかなりエロい。こういうメタ表現のなかに挟んでくるジャストな作画。このクオリティは映画でも出せませんがな。

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「なにそれ、なんかエロい」久美子の言葉は全視聴者の代弁です。

先輩たち

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ここでも田中あすか先輩の人となりがみえます。服装、言動。このエピソード全体を通じて言えることかもしれませんがアクションカットが多いように思います。アクションカットがあることで躍動感や連続性が強調されているように見えます。

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ちなみにモブも作画で動かすのがまたこだわりを感じます。というかモブは3D使うってのはつい最近のことか。

葉月と秀一

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構図もカットのつなぎ方も久美子の時と最初はほぼ一緒です。マッチカット気味。

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葉月の告白。この当たりで流れる音楽は視聴者の気持ちを盛り上げるのに一役買ってます。まぁ京アニの作画技術や演出方針であれば、画だけで十分心情表現できてますが。画だけで心情表現すべきなのがアニメではありますが、でも画だけで表現できるのってホントすごいですよ。それに音楽合わさったらそれこそ鬼に金棒です。

88とても美しいカット。

葉月から見えているであろう風景はこんなにも美しいのに葉月の気持ちの中はそれと真逆。葉月の視線に映っているであろう景色と、葉月の反応を両方見ることができる贅沢なカットです。後ろ姿からでもまばたきをしているのを分からせる長いまつげを動かしてます。「目の動きが心情表現である!」と一貫した姿勢を崩しません京アニ作画陣営。

89葉月の懸命な強がりは視聴者を切なさの嵐に誘います。この強がりの裏側をED中の葉月と緑輝のアクションだけを通じてしっかり回収してくれる演出は、この回が間違いなく神回であることを示しています。

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またまた山登り

基本的に山登りシーンではキャラクターをカメラがフォローして画面がPANします。

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至極の会話集。「わたし本当はさ、前から思ってたの、久美子と遊んでみたいなって。久美子って性格悪いでしょ?」 「もしかしてそれ悪口?」「褒め言葉!」「中学の時、ほんとに全国行けるって思ってたの?って言ってたでしょ」

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「これは愛の告白」「でもわたし久美子のそういうところ気になってたの、まえから。好きっていうか、親切ないい子のフリして、どこか冷めてる。だからいい子ちゃんの皮、ペリペリってめくりたいなって」「それは、どういう….」「わかんないかなぁわたしの愛が」「高坂さんねじれてるよ」

頂上

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外界からの街の光に照らされる麗奈がとても美しいカット。このエピソードにおいては葉月の後ろ姿のカットと並んで美しいです。人の目は、動きのあるところやキラキラしているところを自然に追尾します。葉月と例内、双方のカットとも「川に反射する光のキラキラ」「街から届くキラキラした光」で視聴者の目を惹きつけます。

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99麗奈は他人と違うことがしたい女の子。青春のほとばしり。街からの光の演出に「いささかやりすぎでは?」とは思ってしまいました。が、そもそもアニメとは気持ち良い絵を見せることが第一義。脚色はしなければアニメではありません。
「あれ、お祭りの光かな」「そんなに塚本が気になる?」「そんなんじゃないし!」「ふーん、そんなんじゃないんだ。」といってカメラ側に見せる笑顔。久美子にはこの笑顔が見えていません。からかっているように久美子側からは見えるかもしれませんね。

しかし視聴者側には笑っている麗奈が見えます。この笑顔、どういう意味なんだ!

このようにキャラクターを同じカメラ内に配置しながら、視聴者側にしか表情や仕草などを見えないようにすることで、視聴者側に「秘密を共有」を意識させます。秘密の共有、甘美な響きですね。このワンカットがあることで視聴者は麗奈というキャラクターにとても親近感を感じます。秘密を共有したからです。

「ねぇ、お祭りの日に山に登るなんて馬鹿なこと、他の人達はしないよね?」他の人とは違う、特別になりたい麗奈は久美子に同意を求めます。限りなく限定的な他者に認められることで満足感を得る。そういう心情。「久美子ならわかってくれると思って」自分の秘めたる部分を共有するソウルメイト、彼女はそれを求めていました。

クライマックス

107「誰かと同じで安心するなんて馬鹿げてる」「抵抗したいの、全部は無理だけど」座る久美子に振り向く麗奈。

振り向き途中からACで久美子目線。このAC(正確には前のカットの最後で動きは止まっているかもしれないが)が素晴らしく効果的でドラマチック。

逆光で麗奈の輪郭がはっきりと見える。特別になりたい美しいワンピースの女の子。しかし久美子には彼女はもう十分に特別な存在に見えています。

104「わかるでしょ、そういう意味わからない気持ち」
ここでカメラは久美子を写す。カメラは揺らぐ。このゆらぎは久美子の気持ちを表したものではないのだろうか。画角的には麗奈からの視線ではないようだ。ということは視聴者側のゆらぎの投影なのだろうか?

105ここから麗奈が久美子に歩み寄り、おでこに指を置く、そして久美子に「麗奈」と呼べという。これでもかと美しい麗奈を描く。「私、特別になりたいの」あふれだす麗奈。これでもかってくらいの麗奈感。この2行で麗奈が6回登場してるくらい溢れだしている。

106そこからはもはやフェティシズムの極み。おでこから下りる指が鼻ぷるん、唇ぷるん。このぷるん感なんなんだよ一体…。一コマの描写にかける京アニ作画陣に脱帽です。興奮しすぎて眠れません。

108「トランペットやったら特別になれるの?」ジブリばりのふわっと感を出すスカート、そして満面の笑顔。いつものすまし顔から一転して…。
「やっぱり久美子は性格悪い(笑)」この麗奈、罪深い。

ED

109110久美子と麗奈の演奏で紡がれるエンドクレジット。県祭りで起こった様々な群像劇の結果を見る。
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ピン送り。藤田春香さんは結構ピン送りが好きなのかもしれない。このエンディングクレジットは神演出。久美子と麗奈が演奏にのせてノンバーバルでも十分わかる一枚絵の妙。

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滝ティーチャーがEDクレジットで登場。

115116セリフ無し、キャラクターの作画演技とカットだけで気丈に振る舞う葉月、そして物事にとても真剣に取り組む緑輝を描く。葉月の感情が溢れだすまでのカットの繋ぎ方、そしてあふれた感情がフレーム内に収まらないかのようにアップになる葉月の描写。見習います。

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