スタジオコロリド制作陣の「デジタル作画セミナー」、京都精華大学での模様をお届けします!

これからの京都アニメ事情がアツイ!

現在、京都には都市部とその周辺に芸術やアート関係の大学が多く存在しており、その豊かな教育機関環境を背景に京都市と京都のアニメーション制作会社が協力して京都からのコンテンツ発信を後押ししています。

今回の「デジタル作画セミナー」の舞台となった京都精華大学もその流れを強力に促進する大学の一つ。

フミコの告白」や「陽なたのアオシグレ」の監督の石田祐康さんを輩出している同大学で今回、その石田祐康さんが所属するスタジオコロリドから新井陽次郎さんと栗崎健太朗さんがデジタル作画の講師としてセミナーに登壇されました。

この「デジタル作画セミナー」は京都市を始めとする行政、教育機関、アニメーション制作会社、その他の多数の企業が協賛して行われている京都のコンテンツ振興の一環で、今回は第一部に「デジタル作画セミナー」、第二部ではアニメーション制作やその教育に関わる方々、ハードウェア、ソフトウェア開発・販売など各界それぞれのキーパーソンを集めた、「京都発信、セルアニメ新時代!~京都におけるアニメ人材育成・業界変革・産業振興~ 」をテーマに掲げた「セルアニメ新時代研究部会」研究部会が行われました。

第一部「デジタル作画セミナー」

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第一部、第二部が共に行われたのは京都精華大学の黎明館、大人数での講座やイベントが開ける広さと設備がある施設です。

「デジタル作画セミナー」ではデジタル作画で様々な作品を作り続けているスタジオコロリドから新井陽次郎さんと栗崎健太朗さんが登壇し、普段のアニメーション制作の現場で使われているデジタル作画のソフトウェアとハードウェアでの実践的なセミナーを展開していただきました。

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先日、「台風のノルダ」で第19回文化庁メディア芸術祭・アニメーション部門新人賞を受賞された同作監督の新井陽次郎さんの登場ということもあり、会場にも沢山の受講者、聴講者が集まっていました。

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スタジオコロリドの新井陽次郎さんと栗崎健太朗さん

作画中の新井陽次郎さん(左)と、説明をする栗崎健太朗さん(右)

作画中の新井陽次郎さん(左)と、説明をする栗崎健太朗さん(右)

もともとアニメーターのキャリアスタートはアナログの現場での作画という新井さんと栗崎さん。

セミナーでは前述した実践型のデジタルツールの使い方講座と合わせて、デジタル作画をアニメーション制作現場に取り入れる利点をアナログ時代で苦労したエピソードと比較して紹介して頂きました。例えば大判作画(通常サイズより大きい紙への作画)時でしたり、ソフトによってはカメラワークがつけられることから広がる可能性などです。

パズドラのCMについて

パズル&ドラゴンズ CM「転校生篇」の絵コンテ 

パズル&ドラゴンズ CM「転校生篇」の絵コンテ。CLIP STUDIO PAINTで描かれている

セミナーではまずパズドラのCMについて言及。最近テレビでよく見かけるこのCM、こちらも制作はスタジオコロリドで監督は新井さんです。新井さんはCLIP STUDIO PAINTというソフトでこの作品の絵コンテとレイアウトを描いており、CLIP STUDIO PAINTの利点は「鉛筆の書き味が再現できる点」であると紹介されました。

「マンガ的な表現を取り入れたい」という意向で制作されたこのCM。その表現もさることながらアナログな温かみも感じる方も多いのではないかと思いますが、当然この作品も新井さんが前述されている通りデジタル作画で制作されています。スタジオコロリドは「デジタルでやってはいるが、アナログの質感を大切にしたい」と思って制作されているのだそうです。

スタジオコロリドの制作の中心は「STYLOS」

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STYLOSのタイムシート機能

パズドラのCMの一部の素材とは別に今回のセミナー用に新井さんが用意された素材には、石田祐康さんが監督し新井さんがアニメーションディレクターを務められた「ポレットのイス」を新たに新井さんがセミナーに描き下ろしたカットがあり、さらにその場で「どのようにこのカットがデジタル作画で作られているのか?」という部分を説明するためにデジタルソフトを使いながら説明するといったコーナーがありました。

そこで主に使われるのが「STYLOS」というソフトです。「STYLOS」とはRETAS STUDIOという、デジタルアニメーション制作のために開発されたパッケージに含まれるデジタル作画ツールの名称です。

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「STYLOS」の真価は日本の商業アニメーションワークフローに非常に似せて作られたところにあり、それらは「ラフ原、原画、動画の管理がしやすさ」という点に表れています。

デジタル作画で「キャラクターの動き」を作ることの楽しさ

ClipStudioで描かれた「ポレットのイス」のレイアウト

CLIP STUDIO PAINTで描かれた「ポレットのイス」のレイアウト

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このように新井さんは「STYLOS」を使い、ラフ原と呼ばれるキャラクターのアタリをつけていく作業を行っていきます。その後、ライトテーブル機能(一つ前の紙が透けて見える)や指パラ(紙をパラパラして動きを確認する)が出来る機能を使いながら仕上げて行きます。

ちなみにこの作品の椅子の動きは動物の動きを参考に作られたそうです。

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デジタル作画では「キャラクターの動き」をつけた後、その動きを、ムービーですぐに確認できます。そのため「キャラクターの動き」に関して様々な試みをその場で実施することができます。栗崎さんはデジタル作画をするようになってから「キャラクターの動き」をより追求するようになったと語られました。

また以前は紙での作画環境で制作をしていた新井さんは紙をパラパラして動きを作ることの重要性を語りつつも、動きのチェックが容易なデジタル作画の普及よってより「キャラクターの動き」に興味がある人が増えていくことが、アニメーションの根本にある「動かす」という面白みの部分が追求されていくことになるのではないかと語られました。

「台風のノルダ」よりノルダの作画。ClipStudioでの作画

「台風のノルダ」よりノルダの作画。CLIP STUDIO PAINTでの作画

商業アニメーションの世界は、原画、動画、仕上げ、撮影、と人から人へ素材が流れて行きます。

「紙を使わず全てをデジタル化し、素材の管理や受け渡しをより効率よく行えることがデジタル作画の最大のメリットである」

スタジオコロリドではこのような考えのもとでアニメーションが制作されており、こちらの記事でも紹介させて頂いた通り最終的にはアニメーション制作を「オールデジタル」で行う事を目指されております。

今回、セミナー内で披露された実際の経験の共有はこれからデジタル作画を取り入れようと思っている方にとってはとても貴重なものになったのではないでしょうか。

ワコムの液晶ペンタブレット(Cintiq)&CLIP STUDIO PAINT、STYLOSの体験コーナーも

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今回のセミナー会場にはCLIP STUDIO PAINTやSTYLOSの入った8台のワコムの液晶ペンタブレット(Cintiq)が複数設置され、専門のスタッフのアドバイスのもとに製品を体験できるコーナーが作られていました。また第一部の「デジタル作画セミナー」終了後からは講師の新井陽次郎さんと栗崎健太朗さんも使い方のアドバイスに回るなどの豪華な体制。セミナーで話された事をその場ですぐに本人にレクチャーしていただける環境ってすごいですね。

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今回の「デジタル作画セミナー」では実際のプロの現場でデジタル作画がどのように使われているのかという部分が明るみに出たことにより、聴講者の中にいた多くの学生もよりデジタル作画に興味が移ったのではないかと思います。このように様々な立場の人が協力し合い、情報を共有する場を作ることはこれからのアニメーション業界には必要な活動だと思います。

ちなみに京都精華大学のアニメーション学科では「作画の理論」に力を入れられており、紙と鉛筆を用いて絵を描く上での基礎的な力をしっかり教育されています。そう言った学生がこのイベントを通じてデジタル作画と出会い、紙と鉛筆で描く為の基礎力とデジタルのパワーを融合させた作品を作る未来が今からとても楽しみです。

次回の記事では第二部「セルアニメ新時代研究部会」の様子を紹介いたします。

(取材、撮影、記事:迫田祐樹)

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