初参加!「2018年版アヌシー国際アニメーション映画祭」の歩き方

名前を聞いたことがある方は多いと思う。

外国の映画祭ということでTVアニメ業界の方にはあまり関係のない、遠い国で行われるイベントだろうという程度の認識がほとんどかと思われる。何を隠そう筆者も去年までは同じ認識であった。「昨年、湯浅政明監督の映画「夜明け告げるルーのうた」がグランプリを獲得した・・・」とか「この世界の片隅で」が話題になった、あのアヌシー映画祭というイメージだ。

しかしながら今年はひょんなことから、「あのアヌシー映画祭」へ行ってみよう!と決心し、地元消防団の活動で地道に貯めた貯金を資金に勇んで映画祭およびMIFAと呼ばれる見本市に参加してきたのでその時の体験を綴ってみる。

いざ、アヌシー!

アヌシー駅

アヌシーは、フランスの南東部に位置するアルプス地方の湖畔の街である。有名な山モンブランを中心に北にはスイス、東にはイタリアと接する国境付近に位置する。

フランスはEU圏なので通貨はユーロ(€)だ。日本から短期で行く場合は入国ビザは今のところ必要ない。今回筆者は旅費と時間を節約するため、イタリアのミラノまで直行便で飛び、そこからスイス、ジュネーブへ電車で移動、ジュネーブからバスでアヌシー駅まで約半日をかけて到着したのだった。Google Mapを眺めながらモンブランの頂が拝めるかと思っていたが、天候の関係で今回は残念ながら見ることは叶わなかった。

フランスの湖畔リゾートで開催されるアニメ映画祭

アヌシー湖とアルプスの山々

アヌシーには毎年映画祭が催される期間に約1万人が訪れるほか、年間を通じて湖畔リゾートで過ごすバカンス客や雪山へアタックする登山客が多く訪れるそうだ。

市内の移動は基本バスか徒歩。駅付近にタクシー乗り場があるが、流しのタクシーはあまり期待できないと思った方がよい。(ビジネス関係者は専用シャトルをチャーターするらしい。)

「メイン会場と思しき場所」Bonlieu Center

今回の主な目的である、MIFA会場へ行く前に少し街中を散策してみる。

宿舎よりバス移動し「Bonlieu」という停留所で降りると、「メイン会場と思しき場所」に着く。建物の目の前には広大な湖が広がる。琵琶湖ほどではないが、河口湖よりははるかに大きい。雪解け水がまぶしいくらい透き通っていてスイミングプールみたいだ。湖畔にてしばし現実逃避・・・。

ハッと我に返り、旧市街へ歩いていく。古い建物が雰囲気よく残されている一方、屋内はモダンに改装されているお店が多い。街中にはあちこちに映画祭のポスターやサインが設置され登録バッジ(ネックホルダー式のパス)をつけた人たちで賑わっている。21時近くでもまだ明るい。

運河が流れる旧市街

どこもかしこも某テーマパークのような街!

実は事前に「フランスのサービス業は期待しないほうがよい」という噂を聞いていたのだが、街の人や店員さんは皆、笑顔でサービスしてくれとても好感の持てる人々だ。

決して大きな街ではないが、あちこちで映画祭関係の催しが行われており、いつどこで何が行われ、どうやって移動して、何を見るのか?その全容を把握するのは不可能に近い。詳しい情報は公式サイト(仏英)やアヌシー2018というアプリと現地で登録時にもらうずっしりと重い資料の中の催事スケジュールを見ながら、じっくり計画を練る必要がある。

アヌシー周辺の天候は山麓のせいか移り変わりが激しく、真夏のような太陽に照りつけられたと思ったら、急な土砂降りに見舞われ、傘と日焼け止めがかかせない。靴もできれば2足は準備した方が良いだろう。

しかし歩けば歩くほど、この街の不思議な魅力にはまってしまう。こういう表現は本当に野暮だが、まるでデ○○○ー○ーの中に迷い込んだような錯覚に陥るほどだ。

ところでMIFAって?

MIFAのメイン会場:インペリアスパレス

公式ページにもそもそもMIFAとは?の記述が見つからないので念のため説明する。

Marché international du film d’animation d’Annecy=アヌシーアニメーション見本市の略だと思われる。世界中のアニメビジネス関係各社一同に会し、作品の売買、投資、共同製作など様々なアニメーションビジネスの機会創出に寄与している世界最大の見本市だ。
(引用:https://anime-tokyo.com/mifa/#works-2018 より)

アヌシーでは映画祭と並行して行われる各国アニメビジネスのEXPOみたいなイメージか。

「メイン会場」と思われる場所、BonlieuセンターからいざMIFA会場へ

メイン会場からMIFA会場へ続く湖畔の道

バス停「Bonlieu」にある「メイン会場と思われる場所」から湖畔沿いに15分ほど歩くととても雰囲気のよい、クラシカルなお城が見えてくる。こちらがアヌシー映画祭と同時に開催されているMIFAの展示会場L’Imperial Palaceだ。

MIFA会場前のセキュリティゲート

建物のサイドに設置された入り口からまずは厳重な荷物検査を通り、レセプションでバッジを登録すると、ずっしりとした資料一式とカバン(ブルー、グリーン、パープル)がもらえる。この資料一式を1日持って歩くことになるのだが、2日目からはMIFA会場の案内図と、各種カンファレンスのタイムスケジュールがあればまずは十分だ。

会場内に入ると、あらゆるアニメ関係のデジタルツールやメーカー、VRのブースなどが文字通り世界中から一同に会しており、壮観だ。

MIFA会場のVRブース

今年は6月12日〜15日まで開催されたMIFA見本市。会場では、朝から夕方までさまざまな商談や打ち合わせ、挨拶回りなどが行われ、グローバルなスケールでアニメビジネスと交流が深まる場所である。本当に世界中から、さまざまなアニメ制作/製作会社や自治体が参加しており驚いた。日本人にはあまり馴染みのない地域からの参加国でざっと思い出すだけでも、エストニア、ジョージア、カナリア諸島、南アフリカ、中南米のボリビア、エクアドル、ペルー(ブース大!)などがずらっとブースを構えていた。東南アジアからは特にフィリピンが大きなブースを出展していた。来年はさらに増えると予想される。

期間も終わりに近づくと、夕方5時ごろから堂々と酒宴が始まっているブースもちらほら。

ミーティングアポもひっきりなしで大盛況の東京ブース

今回、東京都ブースには我がJapanAnimeMediaの編集長でもある迫田Pが製作を請け負っている、塚原重義監督「クラユカバ」をはじめ5社のブースが、東京代表として出展しており、どのブースも分刻みのスケジュールで世界中のバイヤーやパートナー、製作会社から就活の学生までひっきりなしにミーティングが行われた。

「クラユカバ」ブースにはヨーロッパ中から多くの就活中の学生が、塚原監督の元で仕事をするにはどうすればよいのか質問しに来たり、タブレットを片手に自身の作品をアピールしに来た。

「クラユカバ」ブースにてポーズをとる塚原監督

MIFA出展者を支える東京ブースのスタッフたち

「熱を出している赤ん坊と妻を置いて出てきてしまった」と後ろ髪を引かれながらも一生懸命作品の説明に終始していた某プロデューサーや、「東京に戻ったら編集とダビング作業が待っている」とため息をつきながらもアヌシーでの滞在を心から楽しんでいる某監督など、同じ目的で協力しあい衣食住をともにしながらすっかり繋がりが深まった様子の東京チーム。

そして東京から来たスタッフはもちろん、通訳やコーディネーターの方まで各作品の製作費用の調達や商機の創出のため全力をつくして、打ち合わせと調整にあたっている姿を目の当たりにし、本当に感動。はるばる来た甲斐があった。

東京代表の出展者の紹介
 ・合同会社ゼリコ・フィルム 『アラーニェの虫籠』
 ・合同会社Tomovies 『水の大地‐Water Ground‐』
 ・Twi-flo合同会社 『クラユカバ』
 ・株式会社ヌールエ 『のら猫クロッチ』
 ・Volca株式会社 『ボーカルボルカちゃん』

チルアウトエリアが本当の意味で「落ち着く」エリアで最高

最高の環境のカフェスペース「チルアウト」エリア

ここでMIFA会場に設置されていた「チルアウト(ゆったり落ち着く)エリア」という名のカフェテリアの画像を紹介します。

こちらでは各種サンドウィッチやパスタサラダ、ラップなどを販売。ご覧の通りの湖畔にせり出したテラスをはじめ、一息つくには文字通り最高のチルアウトエリアだ。食事をとる人もいれば、PCを開いて一人で黙々と仕事に打ち込む人や、各国間での商談、打ち合わせが行われていた。

TOKYOピッチセッション

東京都から選出されてMIFAのピッチに立ったメンバー

開催期間中の14日にはTOKYO フォーカスと呼ばれるピッチセッションが、L’Imperial Palaceの建物5階のホールで行われた。日本の業界ではあまり聞きなれないピッチ(PITCH)という用語だが、企画のプレゼンテーションという意味に近い。アヌシー映画祭では自分の作品をプレゼンすることをピッチという。ピッチは基本英語で行われる。それぞれの企画をプロデューサーや監督が一人10分という短い時間で企画の趣旨やストーリーを英語で紹介。

いよいよ「クラユカバ」の出番。BlenderやBGMを駆使して作りこまれたトレーラー映像や3Dモデルを流用したVRゲーム展開などの拡販計画が盛り込まれている「クラユカバ」のピッチは、迫田Pによる流暢な英語スピーチが非常に堂々としていて素晴らしかったし、ハッピ姿の塚原監督の挨拶もありインパクト大であった。

英語でピッチをする迫田氏

また、今回東京ブースに訪れるパートナー候補企業や学生の反応を見ていて感じたことだが、日本の”ANIME”は世界中の作品と比較した時に本当に特別なジャンルで、日本以外で同等のクオリティのアニメを作っている国は今のところ見当たらない。ただアヌシーの上映会やMIFA会場でのピッチなどをざっと見渡せば、日本の漫画などに影響された作家はたくさん出てきているので、今後はどうなるかわからない。「ラディアン」のトニー・ヴァレント氏など、フランスの特に若い漫画家やアニメ作家、学生の日本アニメへの情熱は非常に熱いものを感じた。誤解を恐れずに言うなら、次の宮崎駿はフランスあたりから生まれるかもしれない。

今回はここまで。Merci beaucoup!

(取材、文責、写真:橘 茂生)

(編集:JapanAnimeMedia編集部)

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