【後編:第8回アニメ制作4.0定例会】アヌシー国際映画祭から感じる海外のアニメビジネス、そしてストーリーボードの有用性について

前編から引き続き後編をお届けする。

ビジネス観点から見たストーリーボード

ビジネス現場における「絵コンテ」の功罪

日本の一般的なアニメ作品における設計図的な役割をなす「絵コンテ」だが、現場で描かれるコンテには割と素描に近いものも多く、最終的に画面に反映されるのはその後のプロセスである「レイアウト」「原画」「動画」「撮影」などアニメーターやコンポジッターの腕次第となることが多いと思っている。またプロの世界のやりとりでは暗黙の了解も多く、コンテの質で作品の仕上がりを読むことはクライアントを含めた「映像の素人」には困難だ。

そういう状況にもかかわらずビジネス現場におけるクライアントとのやり取りは絵コンテで承認となることも多く、それが場合によってはリテイクや納品拒否といった最悪の事態まで起こりうるリスクをはらんでいたりする。要は従来の現場向け絵コンテだけでは情報不足なのである。こうしたリスクを回避する方法はないものか。

会場ホストでもあるwacom 轟木氏

そこで今回は絵コンテからさらに考え方を発展させた「ストーリーボード」という手法の有用性について、会場ホストでもあるwacom轟木氏からお話を聞く。こちらの話と関連して、アニメーション制作の上流であるプリプロダクションの重要性については、前回(第7回)の記事「海外でのコンセプトアートについて」も参照いただきたい。

まずは、ストーリーボード普及のメリットについて解説があったのでスライドから引用させてもらう。

スライド01

様々なクライアントから発注されるアニメ案件の中で、その作品の承認を得るプロセスの現状は絵コンテでの合意が多いのが実情と言及したが、単純なミスはもとよりコミュニケーションの誤差によりすでに多数のスタッフが走ってしまっている現場を巻き戻すのは不可能に近い。その際、制作者および監督の判断の指標となり完成映像に近づけるための方法については、知られてはいても実際の現場まで広く普及していいないのが実情だ。そんな状況下でのストーリーボードの普及は、一つの大きな変革の可能性を秘めている。

日本国内での活動、普及状況について整理

スライド02

アニメに新規参入してくる企業も日々増えている中、アニメに疎い全出資者が納得しすばやく判断を下すことのできる、必要要素を全て盛り込んだ形であるストーリーボード=「精度の高い設計図」はそうしたクライアントのニーズにも応えることができそうだ。実に効率的ではないか。

IP大国として世界に打って出る楔となるか

ストーリーボードを有効的に活用した作品「Gift」(MARZA)のメイキング

国内のアニメは関連も含め売上2兆円産業というが、世界にはまだ60兆円のマーケットが広がっている。そして彼らは日本からの刺激的なIP作品が世界へが飛び出すのを待ち望んでいる。そういったニーズに素早く応えることができ、製作プロセスの上流で海外との売買契約までを獲得するセールスツールとして、ストーリーボード(とプリプロダクション)の有用性を何度も繰り返し言っていきたい。

最後にこうした取り組みの一環として、CGアニメ制作会社であるMARZAではストーリーボードのセミナーも行われていることや、Nikkei Comemo x アニメビジネスと称してジャーナリストの数土直志氏とプロデューサー平澤直氏のビジネスセミナーも紹介し共有したい。
【参照リンク】

 Blenderアニメ制作の進捗報告

アニメクリエイター りょーちも氏

今回で8回目となる定例会でも重点的に扱ってきたBlenderでのアニメ制作とその可能性について、この分野でのインフルエンサーとなりつつあるりょーちも氏に今日も話を聞いた。

まずは、その成果を実際の映像で確認する。

 今回の課題/解決のまとめ

【作画の画角について】

  • グループワーク時の作画や背景のテクスチャーのサイズやアスペクト比の違いなどの問題が起きないように、アスペクト比=1:1(正方形)に落ち着く
  • ただし解像度は2304x2304pxに設定したため、取り込み時は相当重く環境やソフトによってパフォーマンス依存があるので、これは今後も課題となる

【撮影工程の汎用性について】

  • AfterEffects(以下、AE)対応のための様々な実験を行う
  • 今回は撮影用に特別なプログラムを開発した。(これはすごいこと!)やりたいことが明確にある場合、こうした開発も実行できるのがBlenderの強み。
  • 位置ずれやその他さまざまな問題を解消するためにAE内で作動するプログラムを開発したりょーちも氏は「魔改造」と呼んでいた(笑)
  • カメラワーク、プレーン、ライトは移植可能であることがわかった。
  • 今回、詳細は省くがさまざまは実験をした結果、AEは実質「レンダラー」と化すまで設計できることがわかった…etc。
  • こうしてあらゆる予測可能、不可能な問題を先に周りしてつぶしておくことで、作業効率を高速化し、結果として作品全体のクオリティを上げることに集中できる環境を構築してしまうチーム・りょーちもやばい。

【広報ポイント】

  • コンテ制作のワークフローで、従来の線撮までではなく、カメラ+タイミングを含めたアニマティクスを簡単に制作可能なこと
  • 各種工程へのデータエクスポートもより効率的に行える
  • 作画側のメリットとして、作画時のパースやカメラ位置、画面サイズなど曖昧になりやすい「どう見えるのか?」という部分をデータ化しサポートできる
  • やろうと思えば無料で一人で映像制作が可能なこと
  • 3DデータとBlenderを使ったアニメ制作は作画や背景作業者に負荷なく多様な展開が可能となる

【ネクストチャレンジ】

  • VR/AR映像の制作
  • 2Dのアニメータが3D空間に作画することを当たり前にしていく
  • 作品を出す場所、機会の創出
  • 2Dアニメーターに空間で遊ぶ感覚を伝えていく。(同じカットでも違うシーンを見て見たいなど)
  • 「クラユカバ」制作現場より。3Dの背景データをVRコンテンツで再利用する試み→巨大なオープンセットでロケハンしているのと同じ感覚で可能

アニメ制作4.0定例会。回を増すごとにメンバーが増えています!

【質疑応答】

  • TVシリーズ制作との作業時間の差は?

→現状はまだ埋まってないが、さまざまな側面で、作業の効率化、最適化は可能なことはわかっている。例えば、作品の映像効果関連の情報については、比較的簡単にポスプロへ持っていけること。コンテ段階である程度、細部までチェックしてもらえることでのリテークの軽減など。

  • デジタルワークフローの制作進行の効率化はどうする?

→今はまだ実験段階だが、Trelloなどウェブブラウザベースのタスク管理システムを使った工程管理、SlackとTrelloの連携機能を利用してTrelloでのタスクの動きをSlack自動アラートを出して進捗を管理している。課題は多いが、ルールや管理工程もかなり整理されてきた。

  • バージョンアップへのリスクは?

→現在、ver.2.79から2.8へのデータが引き継げないことは判明している。今後は各社の協力を得てBlender開発者とのコンタクトも検討する。

今回のBlender進捗は前回にも増して、内容の専門度が上がり、筆者はついていくのがやっとだったので、上記のアーカイブ記録だけではその全容を把握するにはほど遠い内容となってしまったことをお詫びしたい。

さて、この原稿を執筆した8月に入っても日本は記録的な猛暑。酷暑。くれぐれも体調管理を怠らないようにして、平成最後の夏を乗り切りましょう。アスタ・ラ・ビスタ!

(取材、文責、写真:橘 茂生)

(編集:JapanAnimeMedia編集部)

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