【アニメ制作4.0定例会】りょーちも氏によるBlender途中経過〜新進気鋭のコンセプトアーティストの話が聞けた第7回をお届けします!(前編)

さて、今回も潜入してきました「アニメ制作4.0定例会」!毎回になりますが、どういった会なのかを簡単にご説明させてください。

「アニメ制作4.0定例会」とは
監督 / アニメクリエイターのりょーちも氏とトワフロのプロデューサー迫田氏が発起人となり、アニメ業界の課題としてよく議題に挙がる「デジタル、教育、お金」の解決に向けて、業界内外から経験値をシェア、研究、テスト、実践までの一連の試みをするグループおよび会の総称です。

レビューとしては2回目となる今回もBlenderやコンセプトアート、自動中割りなど興味深々の濃い内容となりました。

こちらの定例会では現状のアニメ制作の課題と解決を真剣に考えている人たちの参加を募っております。詳しくはFacebook特設ページをご参照ください。
(会場協力 :wacom)

当日はお話が3時間超に及び、レポも長くなってしまったので今回は前後編でお届けしたいと思います。それでは早速、いってみましょう。

 今月のアジェンダ

・Blenderのアニメ制作での使用と課題、定期報告(前編)

・海外でのコンセプトアートについて(後編)

・CACANi導入についての報告(後編)

1)Blenderを用いたアニメ制作の成果発表と感じた課題

りょーちも氏

先月に続き、りょーちも氏より実際のアニメーション制作にて用いたBlenderの成果報告があったので記録しておきたいと思います。

昨今、世界中でBlenderを使ったアニメーション制作のケースが増えてきているのは事実で、今後、益々ユーザー数とノウハウが業界に広まり浸透することを期待したい。

まずはBlenderの特徴をおさらい

・3D空間に直接描けるのが特徴!

・3D空間の平面レイヤー層に描かれた素材を利用したドリーイン効果など

・線の太さが画面に対してヒキ/アップ時も一定なのでTP素材として流用可能

・コンテ作業では、とんでもない効率と作品の詳細をチェック可能とする

プロダクションでのBlender作業時に注意すること

今回はグループやプロダクションレベルでの作業、分業のやり方と課題についての報告から。

Blenderにはインターフェイスの複雑さや操作性の「くせ」などがあるのだが、全くのビギナーでも使い始めて1週間もすればだいたいの方は慣れてくるとのこと。ただし、分業のやり方については、細かいルールを徹底する必要がある。機能が盛り沢山なだけに、そこに発生するオリジナルの作業や、名称決めなどさまざまなガイドライン、ルールを定める必要がある。

ちなみにこうしたガイドラインやルールは分業の多いIT業界ではある程度浸透している。Blenderは別アプリとの連携も可能なのだが、やはりビギナーレベルでは対応が難しいという。After Effects(撮影工程でよく使用されるアドビ社のソフト)への書き出しも可能なのだが、機能を熟知する必要がある。

プロダクションレベルでスムーズなワークフローを作るために

今後のアニメーターの必須技術として、こういったソフトウェアの知識はどの程度まで必要なのか。

今はまだ線引きが難しいが、将来的には従来のスペシャリストからジェネラリストを生み出すまでの育成を意識する必要があり、そのためのワークフローや意識改革を皆で考えたいというニーズの高まりからこの定例会が開かれている。。もちろんこの定例会では経験値の豊富な他業界からの知見も必要となるのでそういった方がいれば、ぜひ参加を!

Blenderは「まるっと一活でいろいろできる!」ので仕込みには超便利!

(上記動画はACTF2018でも公開されたBlender作業工程の一部分紹介動画)

引き続きビギナーのためのBlender機能紹介があった。りょーちも氏は「まるっと一活でいろいろできる!」ことも強調。例えば、カメラも複数代設置可能(※1)、コンテ段階でいわゆるアニマティクスとして納品することができるので、プリプロダクションの最終段階でフィルムの完成イメージを共有できるのが頼もしい。

具体的な例でいうと、「ハンディブレ」と呼ばれる効果なども細かく設定可能だし、レンダリングもリアルタイムでとにかく早いので、修正後、即時クライアントチェックも可能だ。プレスコで音声を乗せれば作品はほぼ完成系に近い形で、メインプロダクションへ進めることができるのだ。

※1:メインカメラのほか、背景原図用のカメラ、作画用カメラなど複数のカメラを設置し、それぞれのスペシャリストが作業するアングルでカメラを複数設置するということらしい。

オープンソースとは、ノウハウを共有するということ

Blenderは、多くのプログラミング言語同様、オープンソースで開発されている。世界中のエンジニアによって日々新しい機能や知見が公にシェアされている無料のアプリだ。アニメ業界の方に紹介するときに、難しさやトラブルなどの責任問題が強調されないように、アニメ制作4.0として「広く技術を共有」するということをしっかり啓蒙していきたい、という。

なぜなら、アニメ業界も多くのフリーランスによって成り立っており、そこでの技術や知識の共有は本来、業界にとってはとても貴重な資産になるはずだからだ。アニメ制作4.0では実際に複数の制作スタジオと共にそれに取り組んでいる。我々の存在意義にもつながる、「技術ノウハウの共有」をもっと多くの方を巻き込んでやっていきたい。

大手スタジオやプロダクションも今後はこうしたオープンソースの技術をうまく利用したいと考えているはずで、その時内部のアニメーターを囲うのではなく、外部の経験豊富なアニメーターとうまく協業し、技術ネットワークを広げるべきだと主張したい。企業も個人もお互いの技術共有でつながり、完成度の高い1本のアニメを制作するために。

3Dと2Dのワークフローを融合するために

Blenderは3Dソフトなので、ゲームの3Dキャラを取りこんでオリジナルの作画を描き込むことも可能だ(作画データは3Dモデルへ親子づけされる)。3Dと2Dを行き来しながらさまざな手練手管を使って描くことができるので、やろうと思えば一人でもアニメが作れてしまう。アニメータには夢が膨らむ内容だが、では実際のこれからのアニメーターや学生がこうしたツールでの制作を学ぶ際には、当たり前だが、今までの伝統的なワークフローは通じなくなる。

例えば、人件費の計算など。今までの2Dアニメのカット単価には人件費が含まれていなかったり、いろいろな面で変化が必要だし、こうした作業を全体で制作管理する時に「工数管理」などができる、3Dワークフローを管理できる人材も今後必要となる。

果たして、アニメーターにそれを課すことができるのか。または3D/IT業界の人材をアニメ業界へ連れてきた方が近道かもしれないとりょーちも氏は言う。本の良質な原作をパッケージとして海外へ販売する手助けにもなる。そういった事業可能性も今後、狙っていきたいと考えているので、海外からのお問い合わせもじゃんじゃんウェルカムとのこと!

今回の結論として

とにかく、アニメ制作者、映像関係者、デザイナーや他業種のアニメ好き、学生さんは是非、Blenderを触ってみてください!次回は3D業界側の作業ノウハウの紹介なども交えて報告をしたいと思っています。

トラブルシューティング(質疑応答より)

Q)グループで一つのデータを同時に作業はできる?
A)タイムラインで区切ったデータを切って各作業者へ渡し、上がってきたデータを再統合する。

今後はデータの差分管理をgitみたいにできると良い。編集データ履歴が残るようにできるので、やりようによっては値段の高い編集ソフトと同等の機能提供も安価で可能。(笑)

Q)プロダクション管理ツールと連携できれば全工程を包括管理できるのでは?
A)TrelloやSlack、Redmine、Drropboxなどさまざまなツールを試してはいるがまだ一長一短。今後さまざまな業界からの知見が待たれる。

Trelloの画面

Q)Blenderでの制作フローを広めるには業界の考え方にもパラダイムシフトを起こさなければならないのでは。
A)使い手の成熟度が足りないと、批判に変わってしまう心配がある。「使い勝手が悪い」という評判が強調されるとみな引いてしまう。そうならないように、アニメーターだけでなく、3D屋や、デザイナーやがアニメを作るというくらいの勢いで良いと思う。

また、認知されるにはとにかく一発当てるのが一番早い!(笑)クリエイターへのインセンティブも明確になるし、業界活性化に貢献できる。インターフェイスの使い勝手や、トラブルシューティングもどんどん一般共有して逆引き辞書、動画レクチャー、合宿などもアイデアとして取り入れていきたい。

(・・・会場はこの後も延々とBlenderとアニメ制作について、大変盛り上がったのですが、あまりにも濃い内容なので割愛いたします。良い、悪いも発見次第、引きつづきこの場で共有していきます!!)

「Blenderで3Dレイアウト」

続いて、wacom轟木氏より紹介された神威光司氏がtwitterで公開したPDFについて。ご本人から説明を聞く。見出し文言をキャッチーにしたり、使いやすさを意識して作っているとのこと。

Blenderではバージョン2.7と2.8の機能の違いがあり、現場ではこれがしばしば問題となっている件にも言及。一度バージョンアップすると後戻りできない、前バージョンではできていたことができなくなったり、作業途中での移行時に前バージョンのバグだけ引き継いでしまう可能性などがあるそうだ。

「2D背景原図からの簡単3D化」

続いてBlenderの使い方を説明するりょーちも氏によるデモ。もともと1枚の背景原画を3D空間のパース上にマッピングし、グリースペンシルで追加の要素を描き込んで、そのまま奥行きのある空間を作ってしまった。

Twiflo プロデューサー迫田氏

迫田氏はプロデューサー目線で言う。「こうした方法で制作していることはそのままメディアバイヤーやファイナンサーを説得する際に大きくセールスポイントとなると思う。3Dを利用していることでアセットがたまり、ゲーム化、VRコンテンツ化への展開もイメージしやすい」(現在、自身がプロデュースする塚原監督作品「クラユカバ」で使われた3D素材を実際にVRコンテンツ化へ絶賛開発中!)

またこちらもwacom轟木氏より映像リファランスとして全てBlenderで作られた海外のアニメ HEROの紹介もあり。

 

以下、後編へ続く!

【アニメ制作4.0定例会】りょーちも氏によるBlender途中経過〜新進気鋭のコンセプトアーティストの話が聞けた第7回をお届けします!(後編)

 

(取材、文責、写真:橘 茂生)

(編集:JapanAnimeMedia編集部)

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