【アニメ制作4.0定例会】次世代のアニメ制作が話される定例会を体験してきました

その名も「アニメ制作4.0定例会」!

様々なナレッジシェアと、実際の制作事例をシェアしていく定例会に潜入してきました。ちなみにこの会、これからのアニメ制作を真剣に考えている人たちであれば誰でも参加可能のようですよ。

(会場協力 :wacom)

アニメ制作4.0定例会とは?

「アニメ制作4.0定例会」とは監督 / アニメクリエイターのりょーちも氏とトワフロのプロデューサー迫田氏が発起人となりアニメ業界の課題としてよく議題に挙がる「デジタル、教育、お金」の解決に向けて、業界内外から経験値をシェア、研究、テスト、実践までの一連の試みをするグループの総称です。なんなら、とかく外の業界との交流が苦手なアニメーション制作業界人の円滑な交流の場としても期待されていたりします。今回JapanAnimeMediaがお邪魔した会は第6回とのことで、過去5回すでに開催されているとのこと!

ところで、「4.0」ということは、「1.0」~「3.0」までがあるはずでして。僭越ながら筆者が勝手に定義してみました!

  • アニメ制作 1.0→アニメ創世記、ディズニーが開発したロトスコープなどの手法
  • アニメ制作 2.0→コマ数を大幅に減らし、ローコスト、ローカロリーで制作するリミテッドアニメーション。代表的なスタジオはハンナバーベラ
  • アニメ制作 3.0→90年代にスタートしたピクサーに代表されるポリゴンモデルをベースとしたコンピュータグラフィックス

といったふうになるのでしょうか?

そして、今、確実に動き出している「アニメ制作4.0」とは一体どういった手法なのでしょうか。

当日のアジェンダ

・エクスペリメントラボ(仮)の進捗報告

・アニメ事業の新しい資金調達の方法

・AIとアニメビジネスの協同

 

1)エクスペリメントラボ(仮)の進捗報告

まずはこの定例会から生まれたアニメクリエイティブラボ「エクスペリメントラボ(仮)」のりょーちも氏よりBlenderを活用したアニメ制作事例の最新事例の報告があった。ACTF2018での衝撃のプレゼンから2ヶ月、実際の制作にすでに投入が進んでいる様子を見ることができた。

「多田くんは恋をしない」のOP映像にBlenderを使用

「多田くんは恋をしない」のOP映像の制作ではBlenderがフルに使用されている。ビデオシーケンスエディター(プレミアと同等の編集機能をそなえたBlenderの一機能)を使い、素材のオーバーラップが可能。3D空間に絵や素材だけでなく、関連資料やメモなども一緒に表示し、デスクトップの作業効率を最大化する。さらにランダムなアイデアをそのまま作画へ組み込んでテストしたり、背景のステージを先に3D空間に描いておいて、どんどん加筆をしたりして、カメラ位置を検証しレイアウトを切るという作業が行われた。

3D空間にレイヤーで配置された素材は、カメラのズーム処理などの効果面の演出でも威力を発揮している。

自由自在!やり方はいくらでも自分流に決めることができる

Blenderの機能を使って傘のような素材なども一部素材の回転配置で作成したり、雨粒などのパーティクル素材も使用できるので作画作業が格段に楽になる。

このようにひとりの作業者が好きなところで2D、3Dの作画手法を切り替えて制作するコンテワークフローはこれからのアニメーターにとっては魅力的なポイントだ。

さらにはシナリオやプレスコのデータをうまく活用して、様々な切り口からムービーコンテ(プリビズ)が簡単に作れる上、既存の2D作画、動画、撮影処理、TP修正まで制作パイプラインの流れを崩すことなく、取り入れることができるそうだ。「多田くん〜」OPでは実際にそういった作業も問題なく行っている。

とにかくBlenderは恐ろしくアニメ制作との親和性が高いようだ。

Blenderでの制作ノウハウは、今後の営業体制への強力なツールとなる

当定例会のテーマの一つである「デジタルソリューション」としてのBlenderの研究を進めているうちに、制作業界では滅多に行われることのない、「ムービーコンテ(プレビズ)」をBlenderで効率的に制作することで、映像を使った事前チェックと精密な映像設計が図られ、その後の制作フローの効率化だけでなく、より多くのニーズや企画提案、さらにはより幅広い層のクライアントに積極的にリーチすることが可能となる。

今後はメインプロダクションでの応用が可能という目論見のもと、現場での実施成果のレポートが待たれる。

また、ACTF以降の彼らの動きはCGworldのこちらの記事も参照してほしい。

※もっと詳細を知りたい、自社の制作に活かしてみたいという方はまずは定例会に参加してみてほしい。コンタクトはこちらからか、記事最後のコンタクトフォームより。

2)アニメ事業への新しい資金調達の方法

続いて、株式会社スクラッチによるこれからのアニメ制作の資金調達というとても興味深いテーマについてのシェアが行われた。「アニメ完成保証事業」なる構想だ。

製作委員会方式のデメリットについて

写真右がスピーカーの株式会社スクラッチ沼田氏

既存の製作委員会方式ではステークホルダーが多数いて、それぞれの希望を吸い上げながらの最大公約数となり、結果作品は作家性を欠いた「丸いもの」になりがちである。

本来、コンテンツ(フィルム、アート)というものは、一人の作家のとんがった個性や情熱を十分に発揮した上でのその対価を受け取るべきものであり、現在の製作委員会方式ではそれがほぼ不可能だ。製作委員会方式自体は最大限にリスクヘッジした上で企画の成約率を上げビジネスを回すというとても良いシステムであるのは間違いないのだが、その方式では出てこない作品、合わない作品が沢山あるのも事実である。

「金は出すけど口は出さない」セルフファイナンスのメリットは多大

様々な人や企業から資金をつのり、利益を分配するかわりに口を出さない、というシステムができないものか。スクラッチが提案するアニメ完成保証スキームは、そんな命題を抱えたプロデューサーや制作会社など本来の権利保持者がお金を使える仕組みをファンドというかたちで作れないかという考えからスタートしている。

昨今のSVOD(Netflix, Amazon Prime Videoなど)の躍進もあり、配信権のプリセールスなど資金調達に関わる環境も変わりつつあり、プロデューサーがいかにセルフファイナンスできるかは、作品の質やセールス、その後の権利の確保に大きく関わってきている。

また、アニメ業界にはビジネスファイアンスに知見のある人材が少ないという課題や、監督の降板などで作品の制作が困難になるリスク(=完成リスクという)がある。

スクラッチが目指すアニメ完成保証スキームは、こういった課題をファンドや完成保証という方法でリスク回避できないかという考えを基に、プロデューサーや制作会社が今後、自ら資金調達することで完成した作品のIPやその他の隣接権を保持し、そこから利益を得ることができるようにするための構想だ。

完成保証とは?

まず、作品の企画時点で(例えば有名監督や配給会社と契約を交わした上で)見込まれるセールスやSVODなどのプリセールス契約などを担保に金融機関から制作費を貸し付けてもらう。

実際に作品が完成した時点で、配給会社からお金が支払われ(ネガティブピックアップという)融資先へ返済するスキームだ。

さらに何らかの理由で難航したり、スケジュールが伸びた場合のために、E&O(Error & Omission)という保険制度を整備し、未完成のリスクを限りなく減らしていくというシステムになっている。

資金を返済した時点ではプロデューサーに身入りはないが、作品公開後にライセンスビジネス含めセールスが拡大すれば、プロデューサー自らが権利ビジネスを展開することが可能。

(「となりのトトロ」が公開後にキャラグッズが飛ぶように売れて赤字瀕死だったジブリが持ち直したという話は有名ですね)

アニメ制作はどこで炎上するかわからない、非常にリスクが読み難い分野

こういったスキームはハリウッドではすでに実績を上げているが、国内のアニメ制作の予算規模がそれほど大きくなく、金融機関や保険会社もさほど利益が見込めないことや、制作体制がブラックボックス化することが多々あり、リスクが読みにくいなど、国内ではまだまだ足踏み状態である。

今回のスクラッチのサービス構想では、突如、監督が降板し制作が炎上した場合の火消し作業をはじめ、被害を最小限にし、制作をスムーズに進ませて完成までサポートすることも担保として含まれている。

今後、プロデューサーや独立制作会社を起こす方々にとっては、必須で勉強するべく分野であることは間違いない。


【ディスカッション内容】

・金利保証について(短期と長期で大差あり)

・投資銀行や政策金融公庫、銀行の信用調査系のスタッフなどの意見も組込みたい

・アニメは意外とローコストなものもあるのでまずは実写でトライし、その後アニメへ落とし込むのはどうか

・短編やパイロットの制作費を出してもらいつつ、規模拡大するなど

・クリエイター向けに「融資」「貸付」といったテーマの勉強会を開き教育していくことも必要

・Blenderなどの「道具」を自分たちに最適化し、効率的に実践していくための教育や啓蒙も不可欠

・完成保証とリスクに関して、年月をかけてシステムやデータベース管理の徹底と人月の工数管理が明確にできるようになると、アニメ業界は他業界に抜きん出て一気に大逆転できる

 

3)AIとアニメビジネスの協同  

現代におけるAIとその周辺について

スピーカー:出井氏(弁護士)

時は21世紀、猫も杓子もAIの時代だ。もちろん映画やアニメなどで語られるAI表現では感情をもった、より人間的なAIキャラクターがたくさん描かれていて人々に愛されているが、なんのことはない、クロスリバ株式会社の代表である川合氏に言わせれば、「我々は鉄腕アトムの時代からAIに慣れ親しんでいる」のだ。

出井氏は青山にある骨董通り法律事務所にお勤めの、コンテンツ(アニメ、漫画が得意ジャンル♡)専門のバリバリの弁護士だ。

今回出井氏より紹介された、サウジアラビアでは市民権を獲得したAIや、日本テレビの新人AIアナウンサーや、東京・多摩市長選での世界初のAI市長候補など、直近に発表されたトンデモ?AI事例集は十分キャッチーであった。

そんな昨今のAI事情から、AIと人の間に生まれている新世紀的な結びつき「アナログハック」なるものなど貴重な話を聞くことができた。

AIと人が結びつくときに起こること

AIの定義は研究者によって千差満別で、これという特定がされていない分野であるようだ。

要は膨大なデータから法則性を見出すことのできる技術のことなのは間違いなく、顔認証などのディープラーニングといわれる技術もこのひとつである。研究者は赤ちゃんが家族や動物の顔と名前を覚える時などの学習機能のメカニズムを模しているのだそうだ。

AIはすでに様々な分野で実際に利用されている。医療ではがんの検出を助けたり、サンフランシスコ市では犯罪予測AIを使用し検挙率が高まったそうだ。

AIが作ったアニメの法的な解釈

現在、AIを使ったアニメ制作を進めるなかで、データ収集には個人情報や既存IPの情報も含まれる。海外ではこういった情報の利用は法律で制限されているのだが、日本では情報解析のための収集に関しては、個人または著作権者の許可なしで行える。これにより、著作情報パラダイスと化した日本へ海外からの研究者やAIベンチャーがこぞって乗り入れてきている状態。

アニメ産業では今後のテクノロジーの活用についてが課題となっているが

ポイントとしてAIを使うことで

・いかに魅力を見出せるか

・いかに利便性をどこで見出せるか

・アニメ著作物をどう保護するのか

の3点において話が進む。

アナログハックとは

まず魅力という意味では、初音ミクやモノゴコロの映像ロボットなど、ユーザー目線では十分に魅力を発揮している事実がある。こういった現象は「アナログハック」と呼ばれる。またTVアニメ「beatless」では人間と所有物としてのAIの共存社会が描かれている。

次に利便性では、シンガポール発の自動中割りツール「CACANiや、AIによる自動ペイントツール、MOEキャラ生成ツールなど。

そして著作権の管理と保護については、話題の海賊版サイトの問題を発端に政府が動きだしている。

海賊版問題についてはクリエイターがいくら良いものを作っても吸い上げられる状態で本当に深刻な問題だ。すでに政府は法的にサイトをブロッキングする方向で動き出していているが、表現の自由に対する議論もあり複雑化している。

とにかく、IPホルダーや著作者側でも、これ以上の流血がないように新たなコピーガードシステムを発明することが急務である。とにかく海賊は中世の昔からいなくなった試しはないのだ。

AIとその成果物の権利は誰のもの?

こちらが本題だが、一口にAIといっても、収集解析のためのデータ(素材)とそれを解析するプログラム(レシピ)、そこからアウトプットされた成果物(料理)とそれぞれの過程で対象となる法律も著作権法、民法、特許法とさまざまだ。(詳細は割愛する。出井氏のセミナーに是非ご参加を!)

また、AIが生成した作品は誰のものなのかという議論もある。AIの特性として瞬時に多数アウトプットされるので成果物一つ一つに権利をあたえるのは無理がある。現行法での政府見解に照らしても、AIに関する法律は追いついていないのが現状である。

しかし、エンタメ業界はどんどん進んでおり、AI研究者Ross Goodwin氏が開発した脚本AI「Benjamin 2.0」執筆による映画は大ブレイクした。

国内ではすっかりおなじみのPepperくんにも利用規約を読むとPepperくんは「肖像権に順する権利を有している」とある。(全文はこちらから

出井氏の「骨董通り法律事務所」ではそういったAIによる成果物での著作物の保護や特許申請のサポートも行っている。

参考:

カーツワイル氏の予言2045年にくる「シンギュラリティ」について


【ディスカッション内容】

AIについて

・AIはプログラムであり、新しいソフトである

・日本ではアトムやドラえもんが有名だがそのような、いわゆる「チューリングテスト」を超えたものは未だない

・AIでできることは幅が広すぎてイメージが掴みづらい

・AIよりブロックチェーンでの著作権管理という考え方も

・AIで作られた成果物に対する考え方は、人間がコンピュータで作ったプログラムと変わらない

・著作隣接権については範囲と影響が大きすぎてここでは触れにくい

・商標登録についても海外を含め、商標登録MAPをつくるべき

・そういった権利については民間での紛争(民事)の問題と認識して対応する必要がある

制作サイドと著作権管理に対して

・作業工程でのボトルネックの抽出、サポートなど利便性の拡張を考える場合は、「AI=アシスタンスインテリジェント」の考え方の方がわかりやすい

・セル検査、グラフィック素材の張り込みと連動(例:本やお札など)、レンダリング、コンテ撮とTSの入力作業など人的に完璧に行うには無理のあるプロセスの遂行、各種チェック作業、レンダリングなどの待ち時間を縮めて有効利用など活用するべき

・まずはAIを使うことでアーティストにとって良い経験になったという実感が必要

 

本日の結論「それぞれ会社に帰ってから、著作権の話をしよう!現場からの声を上げるのが重要!」

現場からは以上です。アスタルエーゴ!

(取材、文責、写真:橘 茂生)

(編集:JapanAnimeMedia編集部)

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