【ACTF 2016 前編】デジタル or アナログ…?ACTFが見せたアニメ制作の未来

アニメ制作現場では「デジタルか、アナログか?」で議論するフェイズは、とっくに超えていたようです。

2月13日、練馬区立区民・産業プラザでJAniCA(日本アニメーター・演出協会)、 株式会社ワコム、 株式会社セルシスとの共同主催による「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム 2016(以下、ACTF 2016)」が開催されました。

本フォーラムでは、すでにペーパーレスで作画に取り組んでいるアニメーターや制作プロダクションと ツールを提供するメーカーに登壇いただき、業界の未来を探ります。

作画はペーパーレスになるのか? 紙と鉛筆で続いていくのか? デジタル化によって得られるものは何か? 紙と鉛筆の優位性は何なのか? 失われるものは何なのか? その経営的判断は?  ペーパーレス作画の知識はどうやって習得するのか?

現場クリエイターはもちろん、多くの業界関係者にお集まりいただき、 制作現場のデジタル化の現状を共にしっかりと見極めましょう。(JAniCAのHPより)

上記の文はJAniCAのHPに掲載されているACTF 2016の紹介文です。

この紹介文が示す通り、ACTF 2016は実際のアニメ制作現場の最先端でデジタル技術を導入しているアニメーターやプロデューサー、そしてデジタル技術を開発しているソフトウェア、ハードウェアの技術者の生の声が聞ける貴重な場になっており、未来の日本のアニメ制作の一端が見えるイベントになっておりました。

この記事では【ACTFの醍醐味】として、ACTFならではの体験や、セミナーの登壇者の声を多く掲載していきたいと思います。

【ACTFの醍醐味①】ブーススペース

TVPaint

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ACTFでは同じ会場で平行して行われる様々なセミナーや体験ブースを通じて、多種多様なアニメ制作体験ができます。

メイン会場で行われるメインセッション(後編で紹介)を中心に、特設で用意されたブーススペースではソフトウェア、ハードウェアの会社のスタッフが各々ブースを開きその場で商品の使い方を紹介してくれたり、それらのソフトやハードの独自の使い方を披露してくれるクリエイターとの出会いもあります。

上記の写真はフランス生まれのソフト「TVPaint」ブースのスタッフの方々。後編のサンジゲンの発表(メインセッション)でも紹介しますが、日本のアニメ制作現場でも導入事例が増えているソフトです。

CACANi

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こちらはCACANiのブース。シンガポール発のこのソフトは「自動中割り機能」を搭載し昨年のACTF 2015でも話題になったソフトです。昨年の夏にJapanAnimeMediaでもインタビューさせて頂きました。

デジタルアニメ制作環境の未来:『CACANi』のビジネスマネージャー、Liew氏が語る

担当者はHong Ze Liewさんで、自身もアニメーターでありながらCACANiではビジネスディベロップメントマネージャーとして世界中を駆け回っておられます。「中割り」という、日本のアニメーターの役割としてとても重要な部分を「自動化」してしまうというこのCACANi、やはり気になる人が未だに多いのかブースは終始賑わっておりました。

PsAxe

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こちらはねこまたやさんのブースです。

ねこまたやさんは大分で活動されているアニメーターで、デジタルやテクノロジーという話題では知る人ぞ知るという方です。かくいう僕もAfter Effectsのタイムリマップ機能で絵に演技を付けたいと思った時に、既存のAfter Effectsの機能ではアニメのタイムシート機能がないことを知り愕然としたことがありましたが、そんな時にねこまたやさんの「りまぴん」で救われた過去があります。

ねこまたやさんは今回のブースでは「PsAxe」(Photoshop Animation Xps Extension)の実演をされてました。このPsAxeとは、Photoshopの貧弱なアニメーション機能(もともとアニメ向けのソフトではないので当たり前ですが)でのアニメ作画を補うためにねこまたやさんが開発された補助ツールです。

アニメーション機能を実装したソフトが増えてきている現状ですが、固定ファンを多く持つPhotoshopを使ってのアニメ制作を実現するこのソフトはとても貴重な存在ですね。

個人的にはねこまたやさんに会えてかなり嬉しく、説明が入ってきたとかこないとか。

他にも株式会社セルシスのブースをはじめ、様々なブースがありました。

【ACTFの醍醐味②】セミナー(研修室2)

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メインセッションでの発表とは毛色の違う発表が聞ける研修室でのセミナー。

少し規模を縮小したスペースで行われるこのセミナーでは、小型会場だからの臨場感と雰囲気で面白い発表が聞けるのがポイントで、個人的には今回のACTF 2016、こちらの発表の方により興味のあるものが多かったです。

タツノコプロ(りょーちも )× CACANi

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アニメとデジタルという切り口で語るときに、アニメ業界において常に名前が上がるのがりょーちも監督。「夜桜四重奏~ハナノウタ~」でのFLASHを使った実験的なアニメ作りを既存のテレビシリーズの枠組みの中で実現したことが記憶に新しいです。

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そんなりょーちも監督が今回発表するのがCACANiを使ったアニメ制作の実例。「自動中割り機能」を搭載するソフトをりょーちも監督がどのように使っていくのかに注目が集まります。

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このセミナーではCACANiのHong Ze Liewさんも登壇されました。

以前の取材でHong Ze Liewさんが語っていたことに「シンガポールには内需がないので、開発時の気持ちは常に外(海外)を向いている」というものがありました。そのような気持ちからACTFのように海外で開かれるイベントに出席して製品をプレゼンするHong Ze Liewさんですが、同時に海外のアーティストとの交流や意見交換も積極的にされています。

りょーちも監督も常に新しい技術にアンテナをはり、率先して試すクリエイターの一人です。今回のセミナーでは実際にシンガポールの大学のキャンパス内にあるCACANiオフィスに行き、産学協同で先生と生徒とプログラムに関わっていることに驚いたというエピソードを語られました。

そんなりょーちも監督が実際CACANiを使う中で発見した独自の使い方もセミナーでは披露していただきました。

CACANiで「イメージの連続性を探す」

それは「CACANi上でラフを描き、それをCACANiの自動中割り機能で自動補完させ、壊れながらでも動きの軌道を探し、イメージの連続性を探す」という利用方法。

実際、CACANiの自動中割りは何でも割れるわけではなく、大きな動きや複雑な動きをするキャラクターを自動補完する場合はほぼ100%壊れます。しかしりょーちも監督はたとえ壊れながらでも、動きの軌道、イメージの連続性を探すことにフォーカスする使い方もあるということを紹介されました。キャラクターの動きにこだわり演技をさせる「役者」の役割を持つアニメーターという視点と、「デジタル的な考え方」を持つりょーちも監督だからこそ出る発想ですね。

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ちなみにりょーちも監督がオススメの他のCACANiの使い方は「じわっ」と割るような中割りだそうで、実例として挙げていただいたのが上記の写真のように寝ている時に「微動」する動きの表現でした。

実際に手描きで書くと数ミリ違いの大量の動画を描くことになるのですが、CACANiを使うことによって非常に細かい中割りを自動で生成することが出来ます。


りょーちも:原画を出来るソフトはいくつか出てきているが、「自動中割り」「動画」「仕上げ」をやるソフトはあまりない。これから日本やその他の国がCACANiに対してどのようにオーダーを出すかによって、今後のCACANiの動きが変わってくると思う。

CACANiは日本市場にもある程度ウェイトをおいて見てくれているが、日本の市場よりも海外の市場の規模は大きいという事実もあり、また日本の仕様は独特のもの(縦タイムシートなど)が多いということもある。

日本から日本の現場で求められる機能をオーダーするのか、それとも基本的に世界に通じるユニットであるが、日本にも通じるユニットにしてもらうようにオーダーするのか。このあたりをちゃんと考えていかないと実現可能になる順番が変わっていくと思う。

Adobe Animate CC

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続きまして「Adobe Animate CC」のセミナーです。

プレゼンターはAdobeの轟啓介さん。テンポよく軽妙なトークで会場を掴んでいく轟さんの話はアニメーターではないからこそ聞ける面白い視点に溢れていました。

一体何が起きているのか?

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まずは名称変更。「Flash Professional CC」から「Animate CC」に変わっております。

Adobeは過去からずっと「マルチプラットフォーム対応を目指す」という目標を持っており、それは今も変わってはいませんが、現状はiPhoneなどでFLASHがサポートされない事態などが起こっており完全にマルチプラットフォーム対応かというとそうではありません。その点がこの「Animate CC」を語る上では欠かせないポイントになっているようです。

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上記画像の一番右に見える「Custom Platform」。こちらはAdobeがデフォルトで準備していない物を開発者が開発してAnimeate CCに突っ込んで使うことが出来るというもので、開発者で無い方も「Adobe Add-ons」から入手することも可能であるとのこと。

現状はアニメに使えるものはない?

「今後の可能性は充分にあります!」と轟さんは話します。例えば「HTML5 Canvas」

アニメーションが作れるソフトでhtmlで書き出しができるソフトはあまりなく、その中でのAnimate CCの存在感は今後の可能性を充分に感じさせるものです。「教育期間向けや子ども向けのゲームでは直感的な操作を必要とするものが多くその分野でのニーズは高い。タブレットなどのコンテンツ作りといった点においてはhtmlで書き出すことにはニーズがあると思っている」と轟さんは語られました。

またAdobe Creative Cloudの様々なソフトやサービスと連携することで効率化をすることができるのもAdobeが提供するサービス群の強みですね。

新たなブラシ、効率ツール

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今までも鉛筆ツールやブラシツールはありましたが、今回は更にブラシのツールが増えペイントブラシツールが追加されております。また今までは出来なかったステージ(キャンパス)の回転や、強化されたオニオンスキン機能などアニメーターにとっても嬉しい機能が拡充されています。

Adobe Capture CCを使った連携

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Adobe Capture CCとはiPhoneやAndroidで使えるモバイルアプリで、スマホで撮った写真からカラーパレットを作ったり、アウトラインを抽出しベクター画像を作ったり、写真からカスタムブラシを作る事ができるアプリです。新しくなったAdobe Animate CCでは、このアプリで作ったデータとも連携して素材を活用する事ができます。

実際に僕もAdobe Creative Cloudのユーザーで、このセミナーの前からAdobe Capture CCを使い写真からカラーパレットを作ったり、画像から抽出したベクターデータをデザインの素材として使っていました。個人的にその使用感の中で感じたことは、これらの連携が今後のアニメーション制作の表現の幅を広げることや効率性を上げるであろうという可能性でした。そして今回のセミナー内で轟さんがiPhoneを使って披露されたデモンストレーションを見ることでよりその予感が更に現実味を帯びる事を感じました。

【ACTF 2016:後編】に続きます。

(取材、文:迫田祐樹)

(写真:小路直哉)

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